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「右投げ左打ち」の本塁打が激減。
統一球が変えたプロ野球のトレンド。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/11/05 08:02

「右投げ左打ち」の本塁打が激減。統一球が変えたプロ野球のトレンド。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季ダントツの本塁打数を叩きだした西武の4番、中村剛也。統一球の導入によって、その天性の長打力が際立つ結果となった

 今シーズン、本塁打を10本以上記録したパ・リーグ16人、セ・リーグ19人の顔ぶれを見て気づくことがある。右投げ右打ち、左投げ左打ちの選手が多いこと、すなわちこれまで球界を席巻してきた「右投げ左打ち」が少ない。パは16人中1人、セはパより多いが19人中わずか5人しかいない。この現象を引き起こした最大の要因は、今季から導入された統一球にある。

 従来の公認球にくらべ縫い目の幅が1ミリ広く、縫い目の高さが0.2ミリ低くなることによって、机上の計算では飛距離が1メートル短くなるはずだった。しかし、2010年の総本塁打数1605本にくらべ、今季は939本と激減、飛距離1m減どころではなかったのである。そして、その最大の被害者は右投げ左打ちの打者だった。

 実は昨年も右投げ左打ちの本塁打は少なかった。統一球がさらにそれを加速させたわけだが、本塁打を打つことに関しては統一球であろうがなかろうが、利き手で押し込めない右投げ左打ち選手は昔からずっと不利だった。統一球はその事実をクリアに見せたのである。

本来「右投げ左打ち」は理想的なHRアーチストではない!?

 1950(昭和25)年の2リーグ分裂以降、パ・リーグでは33人、セ・リーグでは36人の本塁打王が誕生し、そのうち右投げ左打ちはパがL・リー、マニエル、ブライアント、ニール、小笠原道大の5人、セが掛布雅之、バース、ハウエル、松井秀喜の4人しかいない(スイッチヒッターは除く)。もちろん、右投げ左打ちは比較的新しい「思想」だったため、昔にさかのぼるほどその数は少なくなる。

 右投げ右打ち、あるいは左投げ左打ちの最大の特徴は、利き手が“後ろ手”になっていることである。つまり、ボールとバットが衝突(インパクト)するとき、利き手で押し込むことができる。これは本塁打を確実に打つ理想的な打ち方と言っていい。

 しかし、右投げ左打ちは利き手が“前手”になっているのでそれができない。前手はバット操作のための操縦桿と言ってよく、それを利き手で操れる右投げ左打ちはヒット量産型の理想と言ってよく、当然チャンスメーカータイプに多く、ホームランバッターは少ない。

【次ページ】 本塁打の秘訣は「バットを長く押し込む」イメージ。

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中村剛也

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