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筒香、国吉、黒羽根ら若手を大抜擢!
横浜ベイの終盤戦から目が離せない。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/09/24 08:02
横浜の育成出身の大型右腕・国吉佑樹は、9月13日の巨人戦で6回途中1失点の好投を見せた。初勝利はまだ遠いが、来季はローテーションの柱としての期待が高まる
シーズンも後半になると、優勝争いとともに楽しみなのが各チームの新戦力の抜擢である。優勝争いをしているチームは目の前の1勝を追いかけるのに汲々としているので、抜擢に躊躇がないのは必然的に下位を低迷しているチームということになる。
セ・リーグなら、クライマックスシリーズ(CS)への自力進出が不可能になった横浜の若手起用が最も目立つ。
9月13日、巨人戦に先発した国吉佑樹は、高校時代も含めて見たことのない選手だった。祖父がアメリカ人のクォーターで、体のサイズは195センチ、96キロと大きい。中学時代はボーイズリーグの名門・オール枚方に籍を置き、高校は熊本の秀岳館に野球留学。この経歴からは素質の豊かさを想像させるが、高校時代の実績のなさは「育成ドラフト1位」(横浜)の評価によく現れている。
1年目の昨年、イースタンリーグで5試合登板を果たし、今年は7月29日の支配下登録と同時に背番号が「111」から「65」と若返った。この国吉の実力がどれほどのものなのか、期待に胸を躍らせて9月13日、横浜スタジアムに出かけたのだが、想像以上だった。
発展途上の国吉だが投げっぷりのよさは魅力的。
まず、投球フォームがいい。ダルビッシュ有(日本ハム)のような例外はいるが、高校卒2年目の195センチ以上ある投手が上・下半身をバランスよく使って投げていること自体珍しい。さらに、バックスイングが内回旋で、体の近くで腕を振り、左肩の早い開きがない。こういう投手はコントロールに一定の安定感があるのが普通で、国吉もその例に洩れない。
「150キロを超えるストレートと、スライダー、カーブ、フォークボール」
これがいろいろな媒体で紹介されている国吉の武器だが、この日のストレートの最速は148キロが1球だけで、最も多いスピード帯は144キロ周辺だった。それが物足りないというのではない。投球フォームのよさに加え、内角を果敢に攻めるコントロールと勝負度胸を備え、変化球は130キロ台前半のフォークボールが、大げさな落差でない分だけストレートと見紛って攻略を難しくさせている。
もちろん、未完成の部分も多い。
123キロ程度のチェンジアップらしきボールを投げるとき、ヒジを下げてスリークォーターで投げるのは打者に球種を教えているようなものだし、5回を過ぎて下半身に粘りがなくなり、阿部慎之助に特大のホームランを打たれているように、フィジカル面の強化も今後の課題となるだろう。しかし、それらを差し引いても国吉の投げっぷりのよさには魅力がある。その後、9月19日にはヤクルト戦に先発して5回を1失点に抑えた。ここまで一軍戦4試合に登板し、0勝2敗、防御率2.91という成績は大健闘と言っていいだろう。