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筒香、国吉、黒羽根ら若手を大抜擢!
横浜ベイの終盤戦から目が離せない。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/09/24 08:02

筒香、国吉、黒羽根ら若手を大抜擢!横浜ベイの終盤戦から目が離せない。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

横浜の育成出身の大型右腕・国吉佑樹は、9月13日の巨人戦で6回途中1失点の好投を見せた。初勝利はまだ遠いが、来季はローテーションの柱としての期待が高まる

二塁への送球が「2秒切り」の強肩捕手、黒羽根。

 この国吉と9月13日にバッテリーを組んだ6年目の捕手、黒羽根利規(日大藤沢)は、その強肩がひと際目を引いた。

 イニング間の投球練習の最後に、捕手は二塁に送球をするが、ほとんどのプロの捕手は全力で投げない。力を温存しているのか、全力のスローイングが格好悪いと思っているのか、ひと呼吸置いて投げるのが普通である。

 ところが、黒羽根は全力で投げ、強肩の基準「2秒切り」を再三記録した。私の計測では1.90、1.92、1.93、1.96秒と、4本の2秒切りがあった。

 さらに凄かったのが、一塁けん制の速さである。

 1.5秒台が強肩の目安と言っていいが、3回表、一塁走者の藤村大介の足を封じようと投げた一塁けん制球は1.35秒という速さだった(投手の投げた球を捕球した瞬間にスタートボタンを押し、送球したボールが一塁手のミットに収まった瞬間にストップボタンを押す)。これは過去10年間、ストップウォッチを押し続けた中で得られた最も速いタイムである。

リーグ屈指の俊足・藤村を刺したバッテリーは期待の星。

 それでも果敢に二塁盗塁を企図した藤村は、さすがにリーグ盗塁数ナンバーワンを誇る韋駄天なだけある。そして、これを阻止しようと黒羽根が投げた二塁送球タイムは2.11秒だった。最近見た西武・銀仁朗の1.87秒(許二盗)、星孝典の1.91秒(二盗刺)とくらべたら平凡なタイムだが、リーグ屈指の俊足・藤村は見事に刺された。

 国吉のクイックが1.15秒程度、黒羽根のスローイングが2.11秒で、2つ合わせると3.26秒。藤村の二塁盗塁に要するタイムは3.15~3.20秒くらいだからセーフになる可能性が高い。しかし、黒羽根のスローイングはコントロールがよかった。さらに、二盗を企図する前の一塁けん制が藤村のリードとスタートを少しずつ小さくし、遅くした。藤村が楽々とアウトを取られるシーンを見て、このバッテリーは将来の横浜を支える期待の星になるなと思った。

高卒プロ2年目の大砲・筒香にも素質開花の兆しが。

 もう1人、横浜の将来を担う新戦力を紹介しよう。

 それはプロ入り2年目で、素質開花の兆しを見せている筒香嘉智である。この選手を紹介するには、3年前のエピソードを持ち出さなければならない。

 '08年夏の甲子園大会準々決勝の聖光学院戦、筒香はホームランを2本打ち、大会タイ記録になる1試合8打点を挙げている。この試合後、私は筒香に次のようなことを言われて驚かされた。

「大きい動きで打つと、球速の落ちるピッチャーは打てるんですけど、速いピッチャーには差し込まれるんで、無駄のないようにコンパクトに打とうとしているんです」

「前(ミートポイントのこと)で打ちたくありません。ポイントが近い(捕手寄り)ほうが確実性が増しますから。大きいのを狙うと前さばきになってしまいます」

 3回戦の仙台育英戦では、私が「許容範囲だと思うんだけど、ヘッドが少し中に入っているんじゃない?」と言うと、「小倉(清一郎)部長から、そういう無駄なことをするなら始動を早くするなりして対応しろと言われました」と答えた。

 昔、ロッテに在籍していたフリオ・フランコくらいヘッドが入れば「そういう無駄なことをして」と言われても仕方ないが、筒香の場合は「く」の字程度の入りなのである。横浜高校の頭脳教育は高校野球のレベルをはるかに越えている、と実感した。

【次ページ】 横浜高校時代の“上から目線”のバッティングが復活。

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