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スター軍団の行方 

text by

小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

PROFILE

photograph byNBAE/gettyimages/AFLO

posted2005/11/24 00:00

 誰もが一度は思い描く「夢のチーム」。オールスター級の選手が集結し、攻めはゴージャス、守りは美しく、そして圧倒的な破壊力でNBAファイナルへと登りつめていく──。年俸総額が定められたNBAでは、そんなチームにはめったにお目にかかれない。だからこそ、今季のマイアミ・ヒートには注目が集まっているのだ。

 ヒートに所属するスター選手(あるいは元スーパースター)を箇条書きにしてみよう。

……おそらく世界最強のセンター。216センチ・148キロの巨体でゴール下を支配する。キャリア平均26.7点、11.9リバウンド

……急成長中の若きスターガード。オフェンスの決定力・支配力は、あのジョーダンにも比較されるほど。3年目の今季は、平均25.3点、7.9アシスト、7.6リバウンドと驚異的な活躍を見せている

……206センチの攻撃型ビッグマン。シュートレンジが広く、ポジションにとらわれずオールラウンドに活躍する。キャリア平均得点は19.8点

……パスで観客を熱狂させるPG。芸術家肌だが、近年はミスやターンオーバーを減らし、司令塔として成熟しつつある

……90年代を代表するPG。37歳の今も、オフェンスの勝負強さと粘りのディフェンスは健在

……ゴール下の鬼神。同期のオニールとはNo.1センターの座を争った仲。腎臓疾患で一時は引退に追い込まれたが、今季は平均3.56ブロックと健闘

 ため息が出るほど豪華な布陣である。ここに、攻守に堅実なジェームズ・ポージーとユドニム・ハスレム、シューターのジェイソン・カポノが加わるのだから、まさにヒートの強さは圧倒的──と言い切れないのがおもしろいところだ。

 バスケットボールは足し算ではなく、ケミストリーのスポーツである。ケミストリーとは、簡単に言うとチームワークのようなもの。それの良し悪しで、1+1が3になることもあれば、逆にマイナスになることもある。個々の能力がどれほど高くても、ケミストリーが良くなければチーム力は半減してしまう。

 だが、スター軍団にケミストリーを築くのは容易ではない。今のところ、ヒートの成績は6勝4敗。オニールやウィリアムズが故障したせいもあるが、やはり最大の問題はケミストリーである。ウェイドがPG的な役割も担うオフェンスの中で、ウィリアムズは力を出し切れていない。スターターが常だったペイトンも、控えという役割に適応できずにいる。ウォーカーが連発する外角シュートは、チームとしての攻撃の流れを妨げることが多い。

 ヒートのようなチームは、波に乗っている時は良いが、崩れる時は一気に崩れる。20日のトロント・ラプターズ戦では、第4クォーターに40点を奪われて逆転負け。ラプターズはイースト最下位のチームで、その試合まで9連敗中だった。シーズン終盤までにケミストリーを改善しなければ、優勝候補のサンアントニオ・スパーズに敵わないのはもちろん、プレイオフを勝ち進むことさえ危うい。

 だが、それでもあえて言おう。今季の注目チームはヒートだ、と。

 勝っても負けても、ヒートはファンの心を揺さぶる。空中分解する可能性、華やかさに潜む危うさ、そうした要素もスター軍団の魅力なのだ。プロとして最悪なのは、地味にひっそりと負けていくことだと僕は思う。

 今季、ヒートは何を与えてくれるのだろう。きらびやかな夢?それとも、歴史的な悪夢?1つだけ確かなのは、彼らから目を離せないということだ。

日本のスター軍団

スター性という意味では、JBLのトヨタ自動車やbjリーグの東京アパッチもおもしろい。特に、トヨタにはヒートに通じる魅力がある。現役日本代表が3人(桜井、古田、山田)、過去数年間の代表経験者が4人(渡邉、高橋、折茂、加藤)。さらに、U-24日本代表の石田、ドイツから帰国した斎藤、ABAに挑戦していた宮田、元NBA選手のオバノン、さらに、サンタクララ大(スティーブ・ナッシュの母校)出身の新卒PG、パーキンズ。チームバランスは決して良くないが、豪華な顔ぶれであるのは確か。ヘッドコーチのジョン・パトリックは、「チームはまだ再建中」と断った上で、「『全員がオールラウンダー』の欧州型バスケットで、日本に革命を起こしたい」と語る。その手腕に注目しよう。

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