日本代表、2010年への旅BACK NUMBER

大人から紳士へ──。
プロ10年目にして覚醒した石川直宏。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2009/07/29 11:30

大人から紳士へ──。プロ10年目にして覚醒した石川直宏。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

第18節終了時点で2位タイの10得点を挙げている石川直宏。ペナルティエリア外からも積極的にゴールを狙う

 28歳、プロ10年目にしての開花である。

 FC東京のサイドアタッカー、石川直宏の活躍が目覚しい。ここ数年外国人選手で独占されてきた得点王争いに食い込み、日本人選手としては2ケタ得点の今季一番乗りを果たした。公式戦連続ゴールは「6」で止まってしまったとはいえ、その勢いが終息する気配は今のところ感じられない。

 ジーコジャパンに選出され、アテネオリンピックに出場するなど“スピードスター”の称号を背に、輝きを放っていた5年前の印象とはガラリと違っている。

 かつては、サイドでボールを持てばやみくもに単騎突破だけを狙うタイプであった。連係といってもサイドバックとの関係ぐらいで、視界が広いとは言えず、オフザボールの動きも物足りないという印象が強かった。持っている才能は誰もが認めるところなのに、もう1歩のところまで来ているのに、化けられないでいた。

4年前の大ケガを飛躍のきっかけに変えた。

 だが今は、まるで別人のようだ。

 城福体制のFC東京は、中盤、前線に流動的な動きを要求する。右サイドから左、中央とポジションを変える石川は、特に3人目の動きにこだわってボールを引き出すことに神経を注ぐようになっている。スピードに乗った突破という武器を活かしつつ、フリーのスペースに顔を出して決定的な場面をつくってきた結果が、今季の爆発につながっていることは言うまでもない。

 連係にこだわるあまり、シュートか、パスかの判断を見誤るプレイヤーは多い。しかし、今年の石川は、その判断が冴えている。それは自分を含めた連係、連動におけるシュートのイメージがしっかりと自分の頭のなかにあるからだろう。

 6試合連続ゴールを決めた7月15日のナビスコカップ、名古屋グランパス戦の後、石川に好調の要因を尋ねると、答えはすぐに返ってきた。

「どこにスペースがあって、どこに飛び出せばいまチャンスになるか、という判断ができていると思うんです。スペースに入っていくスピードというのは確実によくなっている。どこに顔を出せばチャンスになるだろうなっていうのが常に自分のなかにある。はっきりした動き出しがあれば、周りもわかってくれますから」

 彼のターニングポイントは、間違いなく、4年前の大ケガにあるように思えてならない。日本代表復帰を目指していた'05年9月に、右ひざ前十字靭帯損傷及び右ひざ半月板損傷で全治8カ月の重傷を負った。翌年に復帰を果たして以降、スピードのみに依存するプレースタイルが徐々に薄れていった。「昔の輝きはない」と見る向きもあったが、彼は新たな自分のスタイルを模索していたのだ。自分を活かすために周囲との連係を重視するようになり、紆余曲折を経て、やっと実を結んだというわけだ。

<次ページに続く>

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