チーム青森の敗退から見えた、
マネジメントの“超”複雑要素。

生島淳 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Jun Ikushima

photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

チーム青森の敗退から見えた、マネジメントの“超”複雑要素。

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
近江谷安菜
石崎琴美
山浦麻葉
目黒萌絵
本橋麻里

 あれ、元気がないな。

 それがオリンピック・コロシアムで見たカーリング日本代表の姿だった。

 私が見たのは準決勝進出をかけて、重要となったスイス戦とスウェーデン戦。

 日本チームはハウスと呼ばれる円の手前にガードを置き、攻めには行っているのだが、なかなか得点パターンが見えてこない。両試合ともに主導権を握れないまま「コンシード」――相手の勝利を認めて握手すること――という結果に終わってしまった(ゴルフのマッチプレーではおなじみの言葉だ)。

 最終成績は3勝6敗。前回、トリノ・オリンピックの4勝から比べると、一歩後退というところだろうか。

 ただ、前回は「いい試合を見た」という感触が残ったのだが、今回は「もっと出来たかもしれない」という気がする。

 チーム青森はもっともっと、実力のあるチームだ。

カーリングは体力、精神力、知力のすべてを試される競技。

 実のところ、私は経験4年の素人カーラーだ。トリノ・オリンピックを見て始めたミーハーである。

 一般カーラー向けの大会に出てさえ感じるのは、1日に6エンド、3試合を戦うと、肉体的、精神的にクタクタになるということだ。コンディションをベストに保つことは本当にむずかしい。

 しかも10エンド制の場合だと、2時間40分程度の試合を戦わなければならない。当然のことながら冷気が体を包み続けることになるので、体調の管理もポイントになってくる。

 しかもオリンピックでは、一週間で9試合もある。

 カーリングは体力、精神力、そして知力を試されるタフな競技なのだ。しかも時として「運」まで試されるから、たまったものではない。

必ずくる“スランプ”。脱出のためのノウハウとは?

 今回のバンクーバー・オリンピックで準決勝に進出した4チーム、カナダ、スウェーデン、中国、スイスにしてもスランプの時期があった。しかし、どん底から脱出する術を知っている。

 なんとか苦しい試合をモノにして、ストーンを投げる感覚が戻ってくるのを待つのである。

 スイスなどは初戦から3連敗。そこから6連勝してくるあたり、長丁場を乗り切るノウハウを持っている印象を受けた。

 日本にだって経験値がある。前回トリノ大会では、日本は前半戦で勝てる試合で星を落として苦しい展開になったが、そこからスキップ小野寺歩がアグレッシブな作戦に方針を転換、強豪カナダに勝ったことで日本のカーリング熱に火がついた。

 対して今回のマネジメントはどうだったか?

 日本時間の2月20日(土)、首都圏では視聴率16%以上を記録した日本vs.イギリス戦で、日本は劇的勝利をあげ2勝2敗の五分に成績を戻した。

 その翌日から日本チームは「人事異動」という札を切った。選手の入れ替え、セカンドとサードのポジション変更。スウェーデン戦ではバイススキップ(スキップが投じる時に代わって指示を出す)を交代させるなど、積極的に「人事札」を切っていった。

 結果的にロシア戦では大逆転勝利をたぐりよせたが、それから4連敗となってしまい、準決勝進出はならなかった。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  カーリングにおける“マネジメント”の面白さ。

筆者プロフィール

生島淳

生島淳

1967年気仙沼生まれ。早大卒。NBAやMLBなど海外ものから、国内のラグビー、駅伝、野球など、全ジャンルでスポーツを追うジャーナリスト。小林信彦とD・ハルバースタムを愛する米国大統領マニアにして、カーリングが趣味(最近は歌舞伎に夢中)。

著書に『慶応ラグビー「百年の歓喜」』(文藝春秋)、『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)、『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)など。『BSベストスポーツ』(NHK・BS1毎週日曜21:10~)、『生島淳のアクティブスタイル』(TBSラジオ毎週日曜正午~)にも出演中。


Numberオリジナルグッズ作成

その他スポーツニュース

その他スポーツニュース一覧へ

761

アスリートの本棚。
読書が彼らを強くする 
9月2日発売 目次を見る
最新号表紙
ナイトランって気持ちいい!!世界最高のサッカーをWOWOWで見る!有名選手のサイン入りグッズが当たる!言わせろナンバー プレゼントキャンペーン

フォトギャラリー

一覧へ
成田・金子の果敢なヘッドスライディング 砂を巻き上げ猛然と3塁を狙う報徳学園の谷
聖光学院の4番・遠藤雅。打席前の豪快な雄叫び 2ランホームランを放った履正社“T-山田“

文藝春秋の新刊紹介

表紙

野球へのラブレター
長嶋 茂雄・著

天覧試合秘話から、松井、イチローとの知られざる絆まで。ミスターのベースボール讃歌

Amazon.co.jpで買う

表紙

中澤佑二 不屈
佐藤 岳・著

劣等生がなぜ日本代表のキャプテンにまでなったか。彼を見続けてきた記者が解き明かす

Amazon.co.jpで買う

表紙

いざ志願! おひとりさま自衛隊
岡田 真理・著

ごくフツーの女性が酔った勢いで応募した予備自衛官補の試験に合格! 驚きと笑いの体験ルポ

Amazon.co.jpで買う

表紙

中村俊輔オリジナルサッカーノート3冊セット

中村俊輔選手が「17歳の頃からずっとこんなノートが欲しかった」という、サッカーノート決定版がついに完成

Amazon.co.jpで買う