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星野ジャパンへの懸念。  

text by

海老沢泰久

海老沢泰久Yasuhisa Ebisawa

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photograph byTamon Matsuzono

posted2007/02/22 00:00

星野ジャパンへの懸念。 <Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 星野仙一氏が北京オリンピックの野球代表チームの監督になった。

 どういう選考経過で選ばれたのか知らないが、スポンサーを満足させるというのは重要な要素らしい。しょっちゅうマスコミに登場して、彼らの宣伝の助けになる人物ということである。

 その点、前任の長島茂雄氏は最適の人物だった。彼以上にマスコミに注目される人物はいない。そのため、アテネオリンピックの前に長嶋氏が脳梗塞で倒れても、関係者たちは「電話ででも指揮は取れる」などといって、長嶋氏を監督にしたままにしておいたのだった。むろん、監督不在のチームがよい結果を得られるはずはなく、中畑清コーチが率いた“長嶋ジャパン”は、あろうことか準決勝でオーストラリアに敗れて銅メダルに終わったのだが、スポンサーの宣伝という目的は十分に達せられた。

 その意味では、現在、星野氏ほど適任の人物はいない。ほかに星野氏以上にその言動がマスコミに注目される監督候補はいるだろうかと考えてみれば、そのことはよりいっそうはっきりする。

 また、星野氏には、ドラゴンズで2度、タイガースで1度優勝したプロの監督としての実績もある。たぶん、ぼくが選考を任されたとしても、まっさきにその名目を思い浮かべただろう。

 しかし、懸念がないわけではない。たとえば、打撃コーチに田淵幸一氏、守備走塁コーチに山本浩二氏を選んだことに、江夏豊氏は週刊朝日誌上でこういっている。

 「コーチの顔ぶれを見たとき、なんだまた仲良しグループかと、そんな印象を持ったね。別の人選はなかったのかな、協力してくれる人がいなかったのかね。『機動力』を掲げながら、山本が守備走塁コーチって、これは違うんじゃないの?現役時代、守備は悪くなかったけど、走塁を任すのは酷じゃろう。専門家に頼むよりも、身内で固めたほうが星野仙にとってやりやすいということかな」

 誰しもが抱く懸念だろう。仲のいい友達を選ぶのはいいとしても、1本のヒットでランナーをホームに走らせるかどうかを瞬時に判断するサードベースコーチは、昔から高度な専門職と考えられているのに、山本コーチはその経験がないのである。

 だが、ぼくがそれ以上に懸念しているのは、星野氏は前述のように監督として3度優勝しているが、日本シリーズでは一度も勝っていないことだ。

 日本シリーズは短期決戦で、だらだらとつづくペナントレースとはまったくちがった戦い方が要求される。そのため、11勝0敗の川上哲治氏、6勝2敗の森祇晶氏、4勝1敗の三原脩氏を例に出すまでもなく、強い監督と弱い監督に明暗がはっきりと分かれる。0勝3敗の星野氏は、もっとも弱い監督の1人だ。日本シリーズに3度以上出場した監督は全部で15人いるが、1度も勝っていない監督は、星野氏のほかには0勝8敗の西本幸雄氏しかいないのである。

 オリンピックは、いうまでもなく、予選も本番も短期決戦だ。短期決戦に弱い星野氏がそれをどう克服するか、それが見ものでもあり、ちょっと心配でもあるのである。

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