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横浜飛躍のカギは、工藤を「利用」すること。 

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永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2007/02/08 00:00

 「なんでみんな聞きに来ないのかなあ。知っていることは全部教えてあげるのに」

 かつて工藤公康は、こう漏らしたことがある。確かに若い選手が40歳の大投手に気軽に質問できるものではないだろう。それにしても巨人には、工藤に何かを教えてもらおうという選手は少なかった。生え抜きではない工藤に対して、プライドが邪魔をしていたのかもしれない。

 今季、自身4球団目となる横浜に移籍することになった。門倉健がFAで巨人入りしたことによる人的補償である。大矢明彦・横浜新監督は、早実の先輩であるソフトバンクの王貞治監督にこう言われた。「移籍1年目の工藤はやるぞ。十分に若手の手本になる」

 横浜からは獲得の理由について「若手に対して無形の効果を期待している」と聞かされた。工藤は「居心地がいい場所に来たな」と思った。キャンプでは「工藤塾」を、シーズン中には食事会を、球団がセッティングするという。少々能書きが多いが、工藤の話は参考になることが多い。野球知識だけでなく、栄養学や、筋肉バランスのことなど、那須野巧、吉見祐治など伸び悩んでいる若手左腕にとっては、いい勉強になるはずだ。

 昨季3勝に終わった工藤も、移籍を復活のきっかけにしたいはずだ。「この年齢になって野球が続けられるなら、どこでもいい」と、ダイエー時代の同僚である故・藤井将雄の名を出して現役続行の喜びを語った。当時、遠慮のない物言いでチームから孤立していた工藤を「チームのために言ってくれている」とバックアップしてくれた藤井は、31歳の若さでガンに侵された。志半ばでグラウンドを去った彼のためにもという思いがある。

 今の工藤には、野球を続けること以外、余分な野望はないだろう。言葉は悪いが、横浜の選手が工藤を上手に利用し、工藤も上手に利用されるという関係ができれば、自ずとチームも飛躍するはずだ。

 熊谷組を蹴って西武に入団して以来、ダイエー、巨人と渡り歩いた工藤は、移籍1年目に必ず12勝をあげている。落合博満・中日監督も、「移籍でモチベーションが上がれば要注意」と言った。

 5人の子供がいる。生活のかかった一球の重みを知る男は、プレーオフ進出を狙う横浜のいい起爆剤になる。

■関連コラム► 横浜ベイスターズ 「意識の変革」 内川聖一/村田修一 (2008年11月20日)
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