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深まった議論と浮上した課題。
キリンカップで代表が得たもの。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/06/24 10:30

深まった議論と浮上した課題。キリンカップで代表が得たもの。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

長所と短所がそれぞれ顕在化したキリンカップ。本田圭佑や遠藤保仁らが軸となって、3年後のブラジルW杯まで成長し続けられるか?

明確になった攻撃的戦術としてのザック流3-4-3。

 チェコ戦で得られた成果としては、ザッケローニが抱いている3-4-3のイメージが明確になったこともつけ加えられる。

 従来、日本で3バックといえば、守備的な戦術というイメージが強かった。

 これは「4バックのほうが3バックよりもDFの数が多いのに、なぜ4バックのほうが攻撃的とされるのか?」「4バックのSBは攻撃参加要員だから」というあまりにもありふれた解説の影響も大きいし、ザッケローニがイタリア人であることにも多かれ少なかれ起因しているだろう。

 ザッケローニがウディネーゼ時代に採用し始めた3-4-3は攻撃的なシステムだとされているが、実感を伴っては受け止められていなかった。

「バイタルエリアかサイドのところで、1人がフリーになれる」

 だが今回のキリンカップでは、ザッケローニが3バックを完全に攻撃の一つのオプションとして考えているらしいことが判明した。

 チェコ戦の後の記者会見、新システムを導入しようとしている理由、3-4-3のメリットについて著者が尋ねたところ、ザッケローニは淀みなく次のように答えたからである。

「うまく活用できれば、バイタルエリアかサイドのところで、1人がフリーになれる利点がある」

 もしザッケローニが3-4-3を守備的な戦術のオプションとして捉えていたならば、失点の少なさや、後方にディフェンダーが3枚控えていることの安心感について口にしたはずである。

 だがそのような場面は一切なかった。

 3-4-3に関する他の質疑応答でも、彼はむしろサイドアタックとスピードを生かした縦への攻撃の重要性を何度となく説いた。

【次ページ】 「個」の成長とシステムの精緻化。その両輪で成長する。

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