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雨の大混戦を制した「2人のバトン」。
~異常事態続発のカナダGP~ 

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今宮純

今宮純Jun Imamiya

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2011/06/23 06:00

バトンは今季初優勝。ドライバーズポイントでは1位ベッテルに60点差の2位に浮上した

バトンは今季初優勝。ドライバーズポイントでは1位ベッテルに60点差の2位に浮上した

 雨が次々とやって来た週末、42回目のカナダGPは異常事態が続発する展開になった。水煙のなかあちこちで大物たちが接触リタイア。豪雨による2時間4分の赤旗中断後、セーフティカースタートが切られた中盤戦からは、ハーフドライコンディションでのマッチレースがコース全域で繰り広げられた。

 スタンドのファンは雨に濡れたまま4時間を超えるレースの行方を見届け、ファイナルラップでの逆転劇には総立ちとなった。現王者S・ベッテル対前王者J・バトン。大混戦に終止符を打つバトルは狭い6コーナー・シケインで決着を見た。

 今季6度目となるPPを獲得したのはベッテルだった。しかし、カナダで最多タイ11勝を挙げているマクラーレンは、ウェットレースでの打倒レッドブルを狙っていた。日曜は雨がらみになると予測しマシンセットアップを練る。空力性能面ではダウンフォースを強めに、サスペンションは幾分かソフトに。これではドライになった場合、直線速度は伸びないが、濡れた路面ではしっかりグリップし、滑りやすい舗装にもマッチする。

最下位の21位まで転落するや「烈しい」バトンに変身。

 そのマクラーレンを操るバトンの美しいコーナリング。彼のしなやかなアクセルワークと精確なラインアプローチは以前から特筆すべきものがあった。このレースでもそれは見られたが、驚いたのは38周目、一時最下位の21位まで転落するや「烈しいバトン」に変身したことだ。いち早くタイヤ交換をチームに無線で伝えるなど攻撃心をむき出しにし、急速に順位を挽回していった。4時間のゲームに2人のバトンがいた。

 雨が止みかけた51周目にドライタイヤにチェンジすると、彼のマシンは路面状態に完全にフィットした。バトンは1周3秒アップのハイペースで、M・ウェバーと、善戦中のM・シューマッハーを矢継ぎ早に攻略する。

 ベッテルはもっと早く対応すべきだった。ポイントで首位を独走する余裕から警戒心を怠ったのは確かだろう。69周目に0.911秒差まで接近されDRSの使用が可能となったバトンを、ベッテルはストレートでは防戦したものの、6コーナーでタイヤ1本を滑らせた。KERSやDRSに頼るオーバーテイクではないドライバー同士の攻防に、今年初めて敗れたベッテルである。

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