セリエA コンフィデンシャルBACK NUMBER

クリスマス休暇 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

PROFILE

photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2009/01/14 00:00

クリスマス休暇<Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

 1月10日に“やっと”リーグが再開した。今季も、恒例のクリスマス休暇は公式戦を19日間もストップさせる長いものだった。カルチョの国がおよそ3週間も実戦と疎遠である間、イングランドでは述べ9日、スコットランドは3日間も選手たちは毅然とした姿で表舞台に立っていた。イタリアと同じラテン系国のスペイン、ポルトガルでさえ1月3日、4日にリーグを再開。隣国フランスはリーグこそ休暇中だが、1月3日からカップ戦を始め、公式戦4日間を消化した。このように休みに執着せず早い時点で始動している欧州各国の現状を目の当たりにすると、セリエAにおける長いバケーションに違和感を覚えてならない。

 「ウィンターブレーク」に比肩する長期休暇の根底に「プロサッカー選手組合」の力がある。同組合は国の祝日である12月25日、26日を前後して8日間の休暇を主張。この流儀に突き動かされるように、プロ連盟はやむを得ず「クリスマス休暇」を容認している。

 読者の中には「休みが長いのはイタリア流」と考える人もいるだろう。ところが、1991年-1992年まではセリエAもイングランドのようにリーグを続行していた。例えば、元日本代表MF中田英寿氏がセリエAでプレーしていた頃はクリスマス休暇こそ存在したが、1月5日にはリーグが再開。当時の選手たちは暦が替われば理路整然と戦闘態勢に出た。それが近年ではカレンダーの外因も手伝って休暇は益々長くなった。年明け、温暖地での合宿がチームに定着したこともリーグ再開の延びの要因となった。その穴埋めとして厳寒期の1月、週中に公式戦ナイターを組み込むという矛盾も生じた。

 そんな矛盾はプロ連盟の幹部たちの間で募った。同連盟元会長でACミランのガリアーニ副会長は「クリスマスの時期だからこそ、子供同伴でサッカーの試合を観戦できる人たちも多いはず」と、多国が実施するクリスマス期間の公式戦導入案に触れた。休みの慣れによりセリエAの弱体化を懸念するマタレーゼ現会長も公式戦の再開期日の検討に踏み入った。

 某イタリア紙の記事によると、クリスマス時期12月26日から3日間、各地の映画館の観客動員数は2550万人を超えたらしい。この「大入り」が大きな支援体制となり、2008年度の動員数は例年を遥かに上回る1億1600万人を記録したそうだ。我が国に比べて娯楽施設に乏しいイタリアにて、休暇を持て余すイタリア人が映画館に通う回数が多いのは当然の事としても、クリスマス時期の映画館の「大入り」はサッカーの公式戦がないことも一理あると私見を述べたい。スタジアムのチケット代がこのように別品に替わっている可能性は十分ありうる。

 サッカー以外のスポーツ、例えばバスケット、バレーボールなどは休み返上で「営業」している一方で、カルチョだけが2週間余りも公式戦を休止しているのは、単にサッカー選手たちの「甘え」であり、挑戦心のなえと見る。と、同時にジョカトーレの強硬姿勢にクギを刺せず、不可解な状況を見逃しているサッカー協会に不信感を抱かずにはいられない。カルチョに恋焦がれながら人生を送る多くのイタリア人の熱情とは裏腹に、サッカー界に身を置く者が現実を頭で理解できないことにセリエAの堕落を垣間見てしまう。

 かつてクリスマス期間にも熾烈なリーグ戦を繰り広げ、「最高峰」と形容されたセリエA。そんな黄金期を再び蘇らせるためにも、セリエAのクリスマス休暇期間を短縮し、多くのサッカーファンの猛烈な歓声に答えられるような気迫のこもったプレーで年明けそうそうから勝機を帯びたカルチョをするべきだ。

海外サッカーの前後の記事

ページトップ