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プレミア1位。
リバプールの何が変わったのか? 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2009/01/09 00:00

プレミア1位。リバプールの何が変わったのか?<Number Web> photograph by AFLO

 手前味噌で恐縮だが、12月初旬に発売されたNumber718号の欧州サッカー特集には、リバプールの記事が載っていない。今シーズンのリバプールはあまりにも論じる材料に乏しい──プレミア4強の中で一番「代わり映えしない」チームだったからだ。

 ところが現在(1月6日)、リバプールはプレミアで首位をキープしている。ちなみに12月に首位に立っていたのは、ウリエが監督を務めていた2001年以来。クリスマス時点での首位となると'96年以来だというのだから、これは椿事、いや快挙といっていいだろう。

 その要因は何か。謎を解く鍵は、実は「代わり映えしない」点にこそある。

 4強の中で、今のリバプールほど「安定」と「成熟」を感じさせるチームはない。たしかにシーズン初めには、不安定になりかかったこともある。何を血迷ったか、ベニテスは慣れ親しんだ4-2-3-1から4-4-2への移行を表明。トットナムから大枚を叩いて獲得したロビー・キーンを軸に、新システムの試運転を行っている。さらにはクラウチ、リーセ、フィナンなどを放出。あげくの果ては、「ピッチ上における自分の右腕」と評していたはずのシャビ・アロンソまで売却しようとした。

 リバプールにとって幸いだったのは、これらの新機軸が企画倒れに終わったことだ。4-4-2とキーンは不発。アロンソもチームに残留したため、ベニテスは途中から昨シーズンと同じシステム(4-2-3-1)で、ほぼ同じメンバーを率いて戦い始める。その結果、チームは運にも助けられながら、徐々にパフォーマンスを安定させていった。

 しかし、主力選手の顔ぶれとシステムが同じというだけでは、今日の好調は説明できない。普通なら成績も従来と同じレベル(プレミア4位が精一杯)に収まりかねない。そうならなかったのは、ベニテス采配がいい意味で「代わり映えした」からだ。

 昨シーズンまでのベニテスは、システムこそ固定しても、試合ごとに選手やポジションを入れ替えるのが常だった。自身は「最適のコンビネーションを探るため」と説明していたが、明らかにチームをいじりすぎで、コンビネーションは容易に生まれなかった。

 だが今シーズンはメンバーを固定したことでチームが成熟。特にジェラードは4-2-3-1の「3」の中央に固定されたことで、チャンスメイカーやラストパサーとしての才能をさらに開花させただけでなく、「一番好きなゴールの爆撃(本人談)」にも積極的にかかわるようになった。トーレスが1カ月近く戦列を離れていたことを考えた場合、ジェラードがチームの得点王になっているのは不思議でもなんでもない。

 もう1人忘れてならないのは「3」の左側を務めるリエラだ。エスパニョールから来たプレミア出戻り組の攻撃的MFは(彼はマン・シティに一時在籍したことがある)、体のサイズの割に動きが柔らかく、ドリブルや、C・ロナウドのようなトリックも得意としている。昨シーズンは「3」の右側にカイト、左側にバベルという組み合わせが多かったが、リエラが加わったことで、リバプールの攻撃陣は縦方向の突破だけでなく、横方向への広がりやバリエーションを持つものとなった。

 今、リバプールの選手たちは、ベニテス政権になってから初めてといってもいいほど堂に入ったプレーをしている。マスチェラーノが潰し、アロンソが左右に叩き、カイトやバベルは縦突破で、リエラやベナユン(彼もまた放出しなくてよかった選手だ)は柔らかなドリブル突破でチャンスをつくる。そしてジェラードやトーレス(1月3日のFAカップでようやく復帰)が仕上げを担当。一連の流れが板についているだけでなく、マンUやアーセナルが特徴とするゼロトップ的な滑らかさまで備えている。12月28日のニューカッスル戦(5-1で大勝)では、長短のパスを絡めたサイド攻撃で昨シーズンのアーセナルばりの分厚い攻撃を展開してみせたし、その2日前のボルトン戦(3-0)では、キーンを組み込んだ4-4-2を使いこなせるようになってきた様子さえ窺えた。

 もちろんプレミアの戦いは長く厳しい。昨シーズンと同じメンバーが多いということは若手があまり台頭していないということにもなるし、もともと選手の平均年齢が低くないため、怪我人が増えればチームの戦力が落ちてくることも当然考えられる。特にジェラードは、かつてのローマにおけるトッティ並みに大きな存在になっているだけに、長期の欠場はチームの致命傷にもなりかねない。

 だが、こういう懸念があるからこそ、今のリバプールは是非見ておいてほしい。まさに脂が乗り切った旬のチームの姿、そしてベニテスが追及してきた「ラファリューション(スペイン流の粘っこいスタイルと、プレミアのダイナミックなプレーの融合)」の、一つの到達点が堪能できること請け合いだ。

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