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欧州ラウンドで消えたバトンの姿。
揺らぎはじめたF1初戴冠。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byHiroshi Kaneko

posted2009/09/09 11:30

欧州ラウンドで消えたバトンの姿。揺らぎはじめたF1初戴冠。<Number Web> photograph by Hiroshi Kaneko

開幕戦から7戦で6勝という驚異の快進撃はどこへ……。ここ5戦ではわずか11ポイントしか獲得できていないJ・バトン。2位バリチェロとの差は16ポイントまで縮まっている

 夏休み前の第10戦ハンガリーGPから、F1が不思議な動きを始めた。

 ハンガリーではマッサがバリチェロのマシンが落としたパーツの直撃を頭部に受け、負傷欠場し、それまで箸にも棒にも掛からなかったマクラーレンのハミルトンがシーズン初優勝。

 夏休み明けの第11戦ヨーロッパ(バレンシア)ではその余勢を駆って連勝と見えたのも束の間、ピットとドライバーのコミュニケーションのズレでバリチェロが逆転優勝。昨年はマッサが勝ったそのレースで、ハンガリーの事故にかかわった同国の先輩バリチェロが勝つなんて……と、不思議な因縁にアッケにとられる思いがしたものだ。

 それから1週間後のベルギーでは、フォース・インディアに初ポールポジションをもたらしていたフィジケラを強引に仕留めてライコネンが、フェラーリをシーズン初優勝に導くというこれまた意外な結末。夏休み前に撤退を発表したBMWが息を吹き返したりして、夏の乱戦が3回続いた印象が強いのだが、こうして振り返ってみるとあるひとつの“欠落”に気付く。ポイントリーダー、ジェンソン・バトン(ブラウンGP)の話題がどこにもない。

前半独走も欧州シリーズで失速。バトンに何が?

 バトンは前半戦独走のイメージがあまりに強烈だった。イギリスGPからレッドブルが巻き返して来たものの前半7戦6勝の貯金が大きく、オールスター前にマジックが点灯したようなものだったのだ。だからF1メディアも、今年のチャンピオン争いは“過ぎたもの”と、さして気にもしていなかった。バトンの身になればいまさら大振りでホームランを狙うこともなし、コツコツとヒットを重ねていればいつか熟した実が自然に落ちるように初戴冠するんだろうさ、と思っていたようなところもある。それに前半あれだけ勝ったんだから、バトンの表彰台はこれから先はあまり見たくないなあという厭戦(!?)気分もあった。

 しかし、アレッ!? バトン最後の優勝はいつだったっけ? と指折ってみたらなんと6戦前の第7戦トルコ。以降イギリス~ドイツ~ハンガリー~ヨーロッパ、そしてついこの間のベルギーと5戦連続で表彰台にすら乗っていない(バリチェロは優勝含む2回登壇)。

 イギリス以降のリザルトを列記すれば6位→5位→7位→7位と、明らかな右肩下がり傾向。そればかりかベルギーの予選では今季初のQ2落ちで14位スタート。そんなポジションでは多重アクシデントのとばっちりをこうむる可能性も高いのだが、案の定オープニング・ラップで新人グロージャンの追突をくらって今季初リタイア。ラスト4周、エンジンから白煙を吐きながら7位を死守した“F1版オヤジの星”バリチェロと好対照をみせた。いったい、バトンはどうなったのだろうか?

【次ページ】 冷涼な欧州の気候がブラウンGPの弱点を暴いたのか?

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