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無名投手たちの快速球 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2006/06/05 00:00

無名投手たちの快速球<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 前回に引き続き、5月7日以降に見た試合で興味深かったものを紹介しよう。

◇5/13 東北福祉大対東北学院大(仙台六大学リーグ)

◇5/14 白鴎大対上武大(関甲新大学リーグ)

◇5/15 鷲宮高対東海大相模高(関東大会)

◇5/19 四日市工対島田商

◇5/20 同朋高対中京高(以上東海大会)

◇5/22 日本福祉大対名古屋学院大(愛知大学リーグ2部)

◇5/31 慶大対法大(東京六大学リーグ新人戦)

 以上の試合に共通するのは好選手がいたこと。岸孝之(東北学院大・投手)、ミランダ・フェルナンデス(白鴎大2年・投手)、増渕竜義(鷲宮高・投手)、仁藤拓馬(島田商・投手)、大抜亮祐(中京高・投手)、浅尾拓也(日本福祉大・投手)、武内久士(法大1年・投手)……等々。岸は日刊スポーツが「西口文也(西武)似」と紹介していたように、ストレートとスライダーに特徴のある本格派。右打者の内角に思い切って腕を振って渾身のストレートを投げ込んでくるのには驚かされた。6日から始まる大学選手権では6/6が九州東海大戦。もしここを勝ち抜けば翌7日、近大の大隣憲司と投げ合うことになる。

 ミランダはブラジル出身の2年生。大量失点したため登板があったようだが、ストレートのMAXは何と148キロ。この快速球が高めに荒れ狂い、変化球は低めにワンバウンドするという未完の大器ぶり。これより前に登板した1年生の右腕、本多俊弘(白鴎大)も目を引いたが(この日のMAXは133キロ)、ミランダのストレートを見た途端、印象がすっかり弱まってしまった。

 ちなみに、同リーグのドラフト候補、高谷裕亮(白鴎大・捕手)で気になったのはこんなシーン。ネクストバッターズサークルで待機している高谷の頭上に、バックネット最上部に当たったボールが緩やかに加速をつけて落ちてきた。高谷はそれを素手(右手)で捕って事なきを得たのだが、当たりどころが悪ければ突き指をすることも考えられるリバウンドボールである。実は9日前の関西学院大対同志社大でも同じようなことがあった。やはりドラフト候補の清水誉(関西学院大・捕手)がバックネットに当たって跳ね返ってきたボールを素手(右手)で捕ろうとし、弾いたのだ。意識の高い選手なら絶対にしないプレーである。10 日間で2度もそういうプレーを見たので我慢ができなかった。

 増渕、仁藤、大抜の3人の中では増渕、仁藤が6月下旬に発売される『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)の中で詳しい記事が出るので、ここでは大抜についてだけ触れる。この日のストレートのMAXは135キロ。けっして速球派ではない。しかし、球もちがいいのだ。バックスイング時の腕の振りが内回りで、ヒジがしっかり立った状態から前に振り出される。もちろん、コントロールはよく、ストレートに伸びがあるという特性を備えている。中京高は激戦区・岐阜の中でも優勝候補ナンバーワンなので甲子園に姿を現したときは是非注目してもらいたい。

 浅尾は無名中の無名選手。仁藤の取材時間(4時半)まで時間があるので愛知大学野球リーグの中京大対中部大を見ようと瑞穂球場に来たら、2部リーグの日本福祉大対名古屋学院大をやっていたという状況。こっちは深町亮介(中京大・投手)を見たいのに延長戦突入の非常事態。深町はリリーフ投手なので見ることは不可能な状態。ガックリしていると日本福祉大は10回裏、リリーフに浅尾をマウンドに送った。何気なく見ていると、この鉛筆のようなヒョロヒョロした投手の球が速い。スピードガンを持つ左後方の学生偵察隊に球速を聞くと「MAX144キロです」という答え。そして、2つ前の席にいる偵察隊に聞くと「僕のは146キロでした」という答え。日本福祉大には悪いが、全国的どころか愛知県内でも無名の野球校。そういうところにこれほどの逸材がいるというところに、日本野球の豊饒さを感じ取ってほしい。

 武内が所属するのは名門中の名門、法大である。しかし、武内は全国的にはほとんど無名の存在。この無名投手が投げたストレートが新人戦で何と150キロを記録した。外回りのバックスイング、体重の後ろ残り、左肩の早い開きなど、欠点を数多く抱える本格派。それでも、ゼロか100かという未完の大器には大いなる未来を感じる。欠点が修正されたとき、再びレポートを皆さんにお届けしたい。

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