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祖国に捧げるバロンドール。 

text by

酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byPanoramiC/AFLO

posted2004/12/28 00:00

祖国に捧げるバロンドール。<Number Web> photograph by PanoramiC/AFLO

 「喜びを必要としているウクライナ国民にこのトロフィーを捧げたい」

 12月14日、ヨーロッパ最優秀選手に贈られるバロンドールを受賞したFWシェフチェンコ(ミラン)は、祖国・ウクライナに思いを寄せた。祖国に捧げられたバロンドール。これは、ウクライナ国民に対するシェフチェンコの「罪」への償いとも受け取れた。

 先の大統領選挙における不正で大揺れのウクライナ。「西ヨーロッパ諸国化」を切願する国民とは相反する政党を支持していたシェフチェンコは、国民の信用を失うことになったのだ。

 シェフチェンコが表明した「ヤヌコビッチ候補支持」は、欧州で大きな反感を買い、シェフチェンコが第2の故郷として慕っているイタリアでも、「祖国はお前がとった愚行を嘆いている」といった垂れ幕とブーイングで、天才ストライカーを罵るに至った。日に日に高まる批判の声はシェフチェンコの心に深い傷を残した。

 セリエAに移籍して6シーズン。かつての至宝、現オランダ代表監督であるFWファンバステンが歩んだように、ミランの顔になるべく、無我夢中でプレーしてきた。410億リラと破格の移籍金にふさわしい活躍がミランのタイトル総なめにつながり、サポーターの期待に十分に応えてきた。そんなサクセスストーリーの一方で、ひとときたりともウクライナを忘れたことはなかった。

 一度はミラノに移住した家族が再びウクライナへ帰国したこともあって、シェフチェンコの祖国への愛着は一層深まった。実際、シェフチェンコが祖国を慕う思いは、先のワールドカップ予選にも表れている。強敵トルコを相手に3−0の圧勝劇を演じたウクライナは、正にシェーバ(シェフチェンコの愛称)ゴールのおかげでグループ首位に君臨、大会初出場への可能性を高めている。

 広告による報酬をウクライナの子供たちへの寄付金に充ててきたのも、また、イタリアファッション界の巨匠・ジョルジョ・アルマーニ氏とともに、キエフ市内にブティックを開店したのも、祖国を思うがゆえであった。

 人一倍「デモクラシー」を求めるシェフチェンコが、どうしてヤヌコビッチを支持したのか、その理由は明かされてはいない。これも彼の内向的な性格によるものと、同郷の選手たちは解釈している。

 「ウクライナは民主主義国家になるにふさわしい」

 授賞式でデモクラシーを主張したシェフチェンコ。サッカー界の殿堂入りを意味する貴重なタイトルが、ウクライナの発展に結びつくことを願っているのは、ほかならぬシェフチェンコかもしれない。

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