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ジダンに勝った男の行方。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byPICS UNITED/AFLO

posted2005/01/07 00:00

ジダンに勝った男の行方。<Number Web> photograph by PICS UNITED/AFLO

 昨年末、南スペインのマルベラで“FK世界一決定戦”が行われた。GKはスペイン代表のカニサレスで、壁は5人(こちらはスペインのアマチュア選手)。18m、21m、25mの位置から計20本のFKを蹴って、ポイント制で順位が決められた。

 この大会でジダンを押しのけて優勝したのが、オランダのヘーレンフェーン所属のFWウーウル・ユルドゥルム(22歳)だった。ユルドゥルムには高級車が送られると同時に、“ジダンに勝った男”という名誉が世界中に打電された。

 だが、このユルドゥルムがオランダ国内で話題になったのは、この大会より約1ヵ月前のことだった。11月末のUEFAカップのシュツットガルト戦で決勝ゴール、オランダリーグのフェイエノールト戦で同点ゴールを決め、国際的にも国内的にも力を示したからである。今季のヘーレンフェーン躍進の大きな原動力となり、3トップの右ウィングで、右足のシュートとクロスに絶対的な自信を持っている。今季、2部のゴー・アヘッド・イーグルスから、ヘーレンフェーンに移籍してきた新人だ。

 オランダ生まれのユルドゥルムだが両親はトルコ人で、両国の代表になる権利がある。そんな優れたウィンガーを、トルコとオランダが放っておくわけがなかった。現在は両国の間で、ユルドゥルムの激しい争奪戦が繰り広げられている。

 まず11月にトルコのB代表が、ユルドゥルムを招集した。だが、へーレンフェーンが過密日程を理由に拒否し、B代表入りは実現しなかった。これにオランダ代表のファンバステン監督もすぐに応酬。「このままの活躍を続ければ、彼をオランダ代表に招集するだろう」とコメントして、トルコ側を牽制した。ユルドゥルムは「自分はトルコ人だと思っているが、サッカーとなると色んな可能性を考えなくてはいけない」と、両国の間で気持ちが揺れ動いている。

 今年1月にはトルコ代表の合宿に呼ばれたが、これも拒否している。そして、オランダのU23代表がついにユルドゥルムを2月上旬の試合に召集した。「彼は最後の決断をしなくてはいけない」とU23のデ・ハーン監督は、ユルドゥルムをオランダ側に引き入れようと必死に口説いているところだ。

 EU統合が進み、国境がなくなりつつあるヨーロッパでは、クラブだけでなく代表でも、選手の争奪戦がチーム強化のカギになってきている。生まれ育った国なのか、自分のルーツとなる国を選ぶのか。ユルドゥルムの選択が、今後同じ立場のトルコ人選手たちに影響することは間違いない。

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