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日本対世界に盛り上がれるか? 

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石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph bySusumu Nagao

posted2008/02/14 00:00

日本対世界に盛り上がれるか?<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 3月5日、代々木第一体育館で新しい総合格闘技イベント『戦極−SENGOKU−』が開催される。主催運営をするのはワールドビクトリーロード(以下WVR)。吉田秀彦や五味隆典、三崎和雄、菊田早苗、瀧本誠といったビッグネームの集う大会であり、PRIDE消滅後に誕生する新たなMMAのビッグイベントだけにその期待度は高い。

 メインイベントの吉田VS.ジョシュ・バーネットもさることながら、去就の注目されていた五味が出場することは大きな話題といえるだろう。UFC参戦も噂されていた五味だが、復活戦は日本で行うことを選択。集客力や知名度を考えても、WVRにとって五味の存在感は大きく、彼を使って、いかにこのイベントを盛り上げていくのか、その手腕が試されるところである。

 ただ気になるのは、五味がこのイベントに何を見出しているのかということだ。国内のタイトルをほぼすべて手中に収め、次に目指すは本場アメリカの“UFC”、あるいは山本KIDやJ.Z.カルバンといった強豪を要する“HERO'S”の参戦が妥当かと思われていたからである。かつてのPRIDE武士道が、まるで五味のためのイベントとなったように、まだカラーの出ていない『戦極』を自分色に染め上げるというのだろうか……。いずれにせよ、どのようなファイトをするか刮目したいところである。

 さて、まずまずのラインナップに加え、公式ルールや階級などが整備されつつある『戦極』ではあるが、強いて懸念をあげるとすれば、このイベントの基本コンセプト“日本VS.世界”という部分に尽きる。カードを見ても分かるように日本人VS.外国人が軸になり、そこにはブレがない。確かに、試合に日本人が常に出てくれば、その注目度は高くなり関心も引く。誰にでも理解できる図式であることは間違いない。

 しかしながら、このコンセプトで思い浮かんだのは、かつてテレビでも中継されていた“K−1

ジャパンシリーズ”である。多くの外国人を要するK−1ワールドGPのシリーズとは別に、日本人選手を中心に世界の強豪とマッチメイクするというイベントで数年間つづいた。

 基本コンセプトはもちろん“日本VS.世界”。武蔵といった実力のある選手をのぞき多くの日本の選手は世界の壁に跳ね返され、非常に厳しい興行だったように感じられた。さらに言えば、ただ外国人と戦うというだけで、格闘技に大切なサイドストーリーが生み出されなかった。端的に言えば、戦って負けて、それで終わり。結果、発展性が少なく感情を移入することが難しかったのだ。結局のところ、年に1度行う日本人同士がワールドGP出場を賭け戦う“日本代表トーナメント”が一番盛り上がっていたように思う。

 かつてPRIDE武士道もVS.世界路線を敷いたが、最後は五味VS.川尻達也といった名勝負を生む日本人同士の対決が多くなっていった。またPRIDE本陣を見てもヒョードル、ミルコ、ノゲイラといった3強に外国人ながら痛く感情移入したものだ。

 やはり、日本VS.世界というのは、コンセプトとしては分かりやすくも、最後は尻つぼみの厳しい状況を迎えてしまうのではないかと懸念してしまう。“外国の人が分からなくても日本人にはたまらないカード”、そして“世界の人に見せても恥ずかしくないカード”を提供することが、ある意味、ビッグイベントの使命かと思われる。そういう意味では、今回の『戦極』のカードはいささか弱いような気がしないでもないのだ。

 とはいえ、ファンのニーズに合わせ、おそらくコンセプトも変化していくだろうし、ここはやっと誕生した新イベントに希望を掲げ門出を祝いたい。そして、この春に開催が予定されている“HERO'S”と“やれんのか!”の大連立イベントと、いい意味で切磋琢磨できるような独自のカラーを発揮し、ともに日本の総合格闘技界を牽引してもらいたいものである。

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