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闘争心溢れるサッカーも、行き過ぎは困るのだ 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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posted2006/03/01 00:00

闘争心溢れるサッカーも、行き過ぎは困るのだ<Number Web> photograph by AFLO

 ブンデスリーガ第20節、シュツットガルト対ブレーメンの試合でブレーメンのGKラインケが相手FWと激しく衝突、ラインケは額を切っておびただしい量を出血した。交代で入ったGKは、「ペナルティエリアが血でベットリ濡れていた」と振り返る。ラインケはすぐさま病院に運ばれ手術を受けた。回復するまで1ヶ月はかかるという。

 同じ日、ハノーバーでも犠牲者が出た。ハンブルガーSVのFWアイウトンが1対1の競り合いで下顎を骨折したのである。翌日に3時間の手術を受け、左下顎の2箇所をチタン合金で補強した。こちらは全治2ヶ月。移籍後3試合目で早々のリタイアとなった格好だ。

 血だらけのシーンを見せられたファンはショックを受けたが、一方で著名な医師らは「起きて当然」と分析している。その理由として、「ドイツのファンはとにかく1対1の競り合いを好む」点を指摘する。

 確かにそうである。アマチュアでもシニアでも少年でも、この国のサッカーは『ツバイカンプ』(1対1)で絶対に負けたくない気持ちでプレーしている。マスコミは「例えばFIFAがルールで肉体的接触を禁止にしたとする。そうすればケガは90%減少するだろう。だが、それでいったい誰が試合を見に来るというのか」と提言し、サッカーとは格闘技的要素が含まれているからこそ面白いのだと結論付けている。

 統計によれば、「サッカーはテニスより危険。しかしバレエよりは安全」なスポーツらしい。年間のケガ人がサッカー24人、テニス3人、バレエ49人という医学の現場から引き出された数字があるからだ。

 試合をコントロールする主審の意見はこうだ。「ブンデスリーガが危険とかアンフェアということは絶対にない。以前より遥かにスピードが速くなり体力的に強化されているが、汚いファウルは減っている。イエローとレッドの枚数も今季は少ない。カードの枚数だったらスペインとイングランドがずっと多いのだし、総合的に見てブンデスリーガはフェアだと断言できる」

 恐らくは偶然に同じ日に2人の重傷者が出たため、サッカーの危険性がクローズアップされたのであろうが、野蛮な反則で血を見るシーンだけは御免こうむりたい。ちなみにこういったシーンが発生した場合、マスコミが真っ先に思い出すのは、82年W杯で相手選手を病院送りにした元代表のシューマッハーだ。汚いプレーを1度でもやったら、その選手は「反則王」として人々の記憶に残るということなのだ。

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