佐藤琢磨 グランプリに挑むBACK NUMBER

出場停止 琢磨の想い 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2005/05/13 00:00

出場停止 琢磨の想い<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 「腹立たしいことはもちろんですが、残念という気持ちの方が大きい。ボクのせいじゃないにしても、ゴールデンウィークを使ってせっかく観に来てくれたファンに走りを一回も見せられないのは申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 スペイン・グランプリ週末の金曜日、同レースおよび2週間後のモナコ・グランプリに不出場となった佐藤琢磨は、感想を求められて、そう口火を切った。

 事の発端は2週間前のサンマリノGPレース後の再車検だった。

 3位入賞したバトンのマシンが最低重量の600kgに5.4kg足りず、BARホンダ・チームがその理由を弁明。車検委員はこれを受け入れ、バトン3位、佐藤琢磨5位のリザルトが正式に出された。ところが翌日FIAがBARチームを告訴。コート・オブ・アピール(上告法廷)での審議を経て、FIA国際控訴裁判所がサンマリノ・グランプリでのBARホンダ2台の除外と、2レース出場停止を申し渡したのだ。ちなみに琢磨のマシンは再車検を受けていない。

 過去にも車両違反でリザルトが抹消されたり失格となった例はあるが、その先2レースも出走を認めないというのは前代未聞。重罰と言っていい。

 なぜこんな騒動になったかを短い言葉で説明するのは難しいが、発端になった“足りなかった5.4kg”は燃料が負担しており、BARホンダ・チームはそれを“使えない燃料”と法廷で説明。だからレース中に最低重量を切って走ることは不可能であると証明したのだが、これが却下されてしまった。

 琢磨の言葉に耳を傾けよう。

 「マシン・レギュレーションの解釈を含めてボク達がして来たことに間違いはひとつもないはずで、ボクはチームをサポートします。F1のルールブックに明確な記述がない限り、みんな同じ(燃料タンク)システムなんです。あの一件のあとずいぶんいろんなチームが燃料タンクを換えたって聞いたし、本当は全員チェックすべき。チェックもしてないのにボクのポイントが剥奪になった。それは仕方ないとしても、他の全員調べてやらないとまったく意味がないことですよね」

 「法廷でもFIAでもボクらは潔白を証明して来たし、マレーシアの車検場でもそれは証明されているわけです。技術的には問題ない。ただFIAが下した判断に対してこれ以上ボクらができることはない。リーガル・アクションを起こしても進展がなく、エネルギーをかける価値がないとチームが判断を下したのであれば、残念だけどスペインとモナコは見送るしかない」

 「いちばん大事なのは、F1を知らない人達の誤解を生まないように伝えていかなければいけないこと。ボクらはズルをしたわけじゃないし、ズルをしてまで勝とうとは全然思ってないし、その潔白をいかにして証明するかっていうことに力を注ぎたい」

 疑惑を生んだのはBARホンダ007の燃料タンク・システムで、モナコの次のヨーロッパ・グランプリまでにBARホンダは昨年までの燃料タンク・システムに戻す。そこでもなお速ければ、琢磨の言う「ズルはしていなかった」ことの証明になろう。

 ショックをバネに佐藤琢磨はまた新しいステージに出て行こうとしている。

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