Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<思考し続けるストライカー> 岡崎慎司 「自分を客観視する技術」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byItaru Chiba

posted2011/06/03 06:00

<思考し続けるストライカー> 岡崎慎司 「自分を客観視する技術」<Number Web> photograph by Itaru Chiba
シュツットガルトに移籍するとすぐにスタメンの座をつかんだ。
順風満帆に思えたが、12試合連続で無得点。
だが、試合への起用は続いた。 なぜ信頼は揺らがなかったのか。
ラスト2試合の連続ゴールにも繋がる、 ドイツでの成長の背景を探った。

 ドイツでの初ゴールを決めた3日後、シュツットガルトのクラブハウスで岡崎慎司はまるで救世主のような扱いを受けていた。

 スタッフから、ユースに通う子供から、サインを求めにきたファンから、次々に「チームを救うゴールをありがとう」と声をかけられ、そのたびに笑顔で手を握り返した。

 残り2節で迎えたハノーファー戦、シュツットガルトは岡崎の決勝ゴールで2対1で勝利し、1部残留が決定した。岡崎がデビューした23節時点では17位に低迷していたことを考えると、奇跡的な巻き返しだった。

 初夏の強い陽射しを浴びながら、岡崎は笑った。

「1試合ごとに課題を持って臨んだら、最後になってやっとようやく見えてきたんですよ。ゴールを決めるコツみたいなものが」

岡崎はなぜこれほど早くチームに順応できたのか?

 今年1月末のアジアカップ決勝後、岡崎はカタールからそのままドイツに飛び、シュツットガルトに入団した。出場許可が下りると、すぐにヨーロッパリーグのベンフィカ戦で左MFとして先発し、結局、シーズン終了まで14試合連続で先発し続けた。

 これまで日本人選手がヨーロッパに行くと、プレースタイルの違いに苦しむケースが多かった。あの本田圭佑でさえ、オランダの最初の半年間は、コンビネーションで崩そうとする自分と、ドリブルばかりするチームメイトと意識を共有できず、2部落ちという挫折を経験している。

 だが、岡崎はぶっつけ本番だったにもかかわらず、すぐにチームに馴染んだ。いったいなぜ、これほど早く適応できたのだろう?

 岡崎は青空を見上げながら答えた。

「日本にいるときから、自分のプレースタイルに限界を感じていたんです。だからドイツに行ったとき、思い切って新しいスタイルに取り組もうと思っていました」

 すべてのきっかけは、2010年南アフリカW杯だった。岡崎は大会直前にエースの座を失ってしまう。

「('09年に)日本代表で得点を決められていたときは、いいパスが来て、それを自分の得意な形でゴールにできていた。でも、W杯前、その形がまったく作れなくなってしまった。クロスが来ないし、裏に抜けるタイミングすら計れない。日本自体が世界と戦って余裕がなかったという部分もあったかもしれないですが、自分がボールをキープして、チームに余裕を作り出すことができなかった。監督を恨む自分もいたけど……すべては自分の力不足でした」

【次ページ】 自分の弱点を客観視できる能力は、技術以上の武器。

1 2 NEXT
1/2ページ
関連キーワード
岡崎慎司
シュツットガルト

ページトップ