ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2006年 VSエクアドル 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

PROFILE

photograph byNaoya Sanuki

posted2006/04/03 00:00

2006年 VSエクアドル<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 「俺を選んでくれ!」

 3月30日、日本が1−0で勝利したエクアドル戦で後半途中から出場したFW佐藤とFW巻の二人のプレーからは、彼らのそんな強烈なメッセージが伝わってきた。

 6月9日に開幕するワールドカップ(W杯)ドイツ大会開幕を控えて、出場チーム登録の期限が5月15日に迫っている。

 “チームへの貢献度”という実績を重視するジーコ監督の中には、選手選択の順列がある。それは、これまでの選手起用や招集に関する指揮官のコメントからもうかがえる。

 まず着目するのが所属クラブでの貢献。コンスタントに試合に出て、チームのためのプレーで結果を出しているか。

 例えば佐藤の場合、2005年Jリーグの日本人最多得点(32試合18ゴール)という結果を残し、今年1月の宮崎合宿で初招集された。彼と同様にFW大黒も2004年リーグ戦での活躍(30試合20ゴール)が評価されて、佐藤より1年早く代表チームに招集された。

 だが、招集はハードルを一つ越えただけにすぎない。次のクリアポイントは代表チームでの貢献ということになるが、すでに実績を積んできた先駆者が何人もいて、これはそう簡単にはいかない。機会を与えられたときに、いかにインパクトと内容のある答えを出すか。しかも、残された時間は短い。

 佐藤は、自分の置かれた状況に敏感だ。その悲壮な執念が、彼のプレーにより一層の動きの鋭さと気迫を加えているように見える。

 エクアドル戦の後半31分に、佐藤はFW久保に代わって登場。同じくFW玉田に代わって入った巻と共に、前線で積極的に動きまわり、チームに新たな流れをもたらした。

 そして生まれたのが0−0の均衡を破る後半40分の決勝ゴール。左サイドからMF三都主が上げた低く速い弾道のクロスに、ニアポストに走りこんで、ダイレクトで左足を合わせてゴールへ流し込んだ。

 「なんとか結果を出したかった。最低限のことはできたと思う」と、佐藤は手応えを感じながらも、「結果を出し続けないと…。自分が厳しい立場にいることは分かっている」と続けた。浮かれる様子はまるでない。

 2月10日の米国戦で代表デビューを果たし、同月18日のアジアカップ予選のインド戦で代表初ゴールを決めたが、その後2月28日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(於ドルトムント)には招集されなかった。

 一方、巻は佐藤より一足早く、昨年7月末の東アジア選手権の北朝鮮戦で代表デビューを飾っている。だが、それ以降、エクアドル戦までの7試合出場で2得点。フル出場は東アジア選手権の韓国戦の1度だけ。彼もまた、ボスニア戦には呼ばれなかった。

 再招集されたエクアドル戦では、ゴールこそなかったが、短い時間で果敢に動いた。特に佐藤とのコンビネーションは、試合ごとに磨きがかかっているように見える。

 「巻とは役割がはっきりしていてやりやすい」と佐藤は言い、「FWは点を取ることで周りから信頼される。そういう意味で重要な試合だった」と自身の得点を振り返った。

 彼らの熱意と執念は、チームメイトにも伝わるのだろう。二人がピッチに入ると、チームにピリッとした雰囲気が生まれたと感じたのは気のせいか。決勝ゴールをアシストした三都主のプレーも、「3−5−2ではサイド攻撃をどんどん仕掛けないと意味がない」と言うように、いつになく積極的だった。

 こういう意識の変化が奏功したのか、チームは、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦で課題となったディフェンスも、エクアドル戦ではチーム全体で守備の意識が強く、しかも最後までその姿勢と集中が崩れることはなかった。ジーコ監督も、「3バックか4バックかというよりも、みんなで高い位置からの守備の意識があった」と、選手の意識の変化を評価している。

 4月は代表チームの活動はない。選手それぞれが所属クラブの試合で活躍することでアピールするしかないが、佐藤や巻の競争相手は多い。

 この日、昨年8月のW杯最終予選イラン戦以来となる先発でプレーした玉田も、復調しつつあることをアピールした。共に先発した久保はまだゲームフィットネスが足りないようだが、ジーコ監督は「生まれながらのストライカー」として信頼を寄せている。

 特に、2004年東欧遠征で見せた久保+玉田の2トップの印象は強いようだ。それだけに、エクアドル戦で前半何度かあった決定機に久保が決めていれば、試合も選考競争も、また違った展開になっていたかもしれない。

 彼ら以外に、3月25日のJリーグの試合中の骨折で今回の試合を辞退せざるを得なかったFW柳沢も、回復次第だが有力な候補だ。そして、高原、大黒もいる。

 競争の激化をジーコ監督は歓迎する。チーム力を高める一因になるからだ。

 「選考がむずかしくなるがうれしいこと。メンバー発表の日まで、ひとりひとりが上を目指してやってほしい」と話した。

 日本代表は5月中旬のキリンカップ2試合を経て、同15日までにW杯メンバー発表を迎える。

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