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浦和の18歳に“世界”を感じた。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/04/13 07:01

浦和の18歳に“世界”を感じた。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 こんなワンツーをされたら、DFもお手上げだ。

 Jリーグ第4節、浦和対大分の前半42分。

 山田直輝とポンテが、ヨーロッパでも滅多にお目にかかれないようなワンツーをやってのけた。

 ポンテが相手3人に囲まれた山田にボールを渡し、山田がダイレクトで返した、というシーンである。その後ポンテが三都主にパスし、左サイドのクロスから大分DFのオウンゴールが生まれた。

 ここで注目したいのは、山田が放った『ツー』のパスだ。ポンテとの距離は3メートルほどしかないのに、パスがシュートかと見間違えるほどに強烈だったのである。

 もちろん、それをピタリと足元に収めたポンテの技術が、一番素晴らしい。ただ、個人的に驚いたのは、至近距離からシュート性のパスを出すという山田のアイデアだった。

 サッカーにおいて、ゴール前に近づくほどワンプレーに許される時間は少なくなる。しかし、もし誰かが瞬間的にギュっとテンポアップできれば、相手DFの対応が遅れ、ゴールの確率は高くなる。そういうコンマ何秒の大切さをわかっている選手でなければ、あんなパスは出せないだろう。

山田直輝の『止める・運ぶ・蹴る』が素晴らしすぎる

 試合翌日、浦和の大原練習場でこの18歳のMFをつかまえた。身長166cm。まだJリーグには3試合しか出場してない。

 あのワンツーのパスは狙いどおりか? そう訊くと、山田は礼儀正しい高校生のように、手を後ろに組み、背筋を伸ばして答えた。

「そうです。リスクを冒さなければ、ゴールは生まれないですからね。ちょっと強すぎたかもしれませんが(笑)、ポンテなら止めてくれると思った」

 このアイデアもさることながら、もうひとつ大分戦で目を引いたのは、山田の『止める・運ぶ・蹴る』の基本3動作が非常に正確だったことだ。トラップした瞬間、次の動作に移っているので、体格の差をほとんど感じさせない。

「それはサッカーの一番の基本なのでね。昔からボクは小さかったので、トラップやボール運びに、ずっとこだわって取り組んできました。いいトラップができれば、体の大きさに関係なく、いいプレーができるんです」

まずは浦和でレギュラー。そして将来は……

 海外のサッカーはあまり見ないが、スペイン代表のマルコス・セナのプレーが好きだと言う。

「ボクは頭のいいプレーヤーを目指しています」

 バルセロナやビジャレアルを見ると、限定されたスペースの中で『止める・運ぶ・蹴る』を素早く正確に行なうことが求められている。足元から足元へとパスをつなぐ、スペインの人たちが『ハンドボール』と呼ぶスタイルのサッカーだ。山田も将来、そういう中に飛び込んで行けるだけのポテンシャルを持っているのではないだろうか。

 だが、1試合だけ良くて、消えて行った新人はいくらでもいる。まずは浦和でレギュラーに定着することが、ブレイクへの第一歩になる。

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