Sports Graphic NumberBACK NUMBER

大黒将志「代表もクラブも1点は1点なんで」 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

PROFILE

photograph by

posted2005/04/14 00:00

SPECIAL FEATURES

[彼らの証言(3)]大黒将志「代表もクラブも1点は1点なんで」

佐藤俊=文

text by Shun Sato

 一躍、オオグロの名を世に知らしめた北朝鮮戦での決勝ゴールは、まさに値千金の一発だった。

 その後のイラン戦、バーレーン戦の試合展開を考えると、その価値は計り知れない。あのゴールがあったからこそ、イラン戦敗北のショックも最小限で切り抜けられたし、バーレーン戦にもある程度の余裕を持って臨むことができた。

 「でも、たった一発だけで、やたら取り上げられるんで、なんか変な感じでしたよ。ほんと、いきなり注目されるようになって」

 ――代表での一発は、昨年の20発('04年度、Jリーグ20得点)より勝る?

 「いや、それはないです。1点は1点やと思ってるし、自分自身も何も変わらないですよ。それにもう終わったことやし、次に出たらまた点取れるように、もっと練習せなあかんと思ってます」

 ――イラン戦は9分と、北朝鮮戦(11分)より短い出場時間でした。

 「あの時は、出る前に一度呼ばれてジャージを脱いで気持ち高めていたら、ちょっと待ってくれって言われて……。早く出たいという気持ちはあったし、スタジアムの声援もすごかったけど、僕のテンションは普通やったです。あまり上がりすぎないほうがいいんですよ。いつもガンバでやっているように普通にプレーするのが大事なんでね。

 でも、出た時の状況は厳しかったですよ。リードしていたから、イランはかなり引いて守っていたし、選手の体格はごっついし、当たりも強いし、足もヘンなところからスッと出てくる感じやったし、なかなかチャンスが掴めへんかった。与えられた中で結果を出せなかったのは残念やった」

 3試合で大黒に与えられた時間は、計20分(2試合に出場)。どんな状況でもまず結果が求められるFWの宿命とは言え、20分はあまりにも少ない。だが、3試合を代表で過ごした経験は、ピッチの中で得られるものと同じく、刺激的で新鮮なものだった。

 「代表に入ってまず思ったのは、みんなうまいし、すごい元気やなと。練習でも声とかよう出てるし、自然に盛り上がってワイワイやっている。シュート練習とかも、入れたらみんなが『ナイスシュート!』って声かけてくれるし、外せばヤジが飛ぶ。まあ普通なんやけど、それが楽しい。あと、いろんな人と話ができたのも良かった。伸二さんとかヒデさんとか、初めて会って人と話ができたんで。ヒデさんは『もっとこうした方がいいぞ』っていろいろアドバイスしてくれたしね」

 ――どんなアドバイスだったんですか?

 「いや、いろいろありましたけど……。普通のことですよ」

 ――海外組の選手と話をして、かなり刺激を受けたようですね。

 「はい。俊輔さんに『イタリアは守って守ってカウンターやから、FWにパス来ないですよね』って聞いたら『全然こねぇよ』って言うてた。そういう状況の中でも自分一人でゴールを狙えるぐらいの力をつけなあかんのやなーって思いましたね」

 ――アウェーの試合もありましたし、慣れない移動を経験して感じたことなどは?

 「時差がしんどいですね。特にイランから帰った時がつらかった。中途半端な時間に眠くなるし、身体がだるいしね。でも、北朝鮮戦の時は、高原さんや俊輔さんは帰ってきてすぐ試合に出てたわけじゃないですか。ハードスケジュールの中でもあれだけできるのは、ほんとにすごいんで、僕ももっと頑張らなあかんって思いましたね」

 ――試合そのものについての印象は?

 「最終予選の試合は普通のゲームと違う。バーレーンだって、親善試合やったら日本は負けへんと思う。でも、予選となると相手も必死やし、お互いにいいところを消し合うからガチガチの試合になる。なんか目に見えない重さみたいなのがあるし、ラクな試合はひとつもない」

 ――もう少しプレーする時間があれば、と思ったことはありませんでしたか?

 「ははは。本音はやっぱりスタメンで出たいっすよ。それやったら最低45分は出れるやないですか。それにバーレーン戦の時、ベンチ外れて上から見てたけど、スタメンってやっぱりスゴイことやと思いました。ピッチには11人しか立たれへんし、FWはこれだけいる中で2人しか出られへん。そこに立つということは、それだけ力があるということやから。もっと力をつけて、スタメンでピッチに立てる選手になりたいですね」

 ――代表のピッチとクラブチームのピッチの風景は違うもの?

 「いや、一緒ですよ。サッカーやるだけなんで。ただ、FWにとって一番大事なんは点取ることなんで、そのためにはどちらも試合に出ないと取れないから」

 飄々とした語り口からはあまり想像できないが、相当な努力家である。昨年、20点中7点をヘディングで決めたが、それはシーズン前、紐のついたボールを吊して練習に励んだ成果だった。足は左右、さらにヘッドとあらゆるシュート練習をこなす。「練習は裏切らない」が信念だ。また、代表という経験が触媒となって意識も高まった。

 ――6月までは、少し時間があります。

 「特に、これやろう、というのはないです。ゴールを重ねていくことが大事やし、いつも通り集中して練習していくだけ。代表に入ったからうまくなるわけではなくて、練習するからうまくなるんでね。うまくなって代表とガンバの両方で点取って結果を出したい。難しいと思うけど、それが目標っすね」

 “練習の虫”にスランプはない。また、いつものように黙々と練習し、ゴールを積み重ねていくだけだ。その先に再びチャンスが巡ってくる。

ページトップ