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長谷川穂積 ほんまもんのチャンピオンになれた日。 

text by

浅沢英

浅沢英Ei Asazawa

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posted2006/04/20 00:00

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[特別インタビュー]長谷川穂積 ほんまもんのチャンピオンになれた日。

 

 

浅沢 英=文

text by Ei Asazawa

 

 3月25日、神戸ワールド記念ホールで行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチは、チャンピオン長谷川穂積の右フックによる、鮮烈なワンパンチKOで終幕した。

 キャンバスに落ちたのは、かつて辰吉丈一郎からタイトルを奪い、14度防衛の長期政権を築いたウィラポン・ナコンルアンプロモーション。この前王者との1年ぶりの再戦を「できれば避けたい試合だった」と、長谷川は振り返った。

 「いつか、やらなあかん試合なんでしょうけど、できればもっと実力をつけてからやりたかった。その方が、勝てる確率が高くなる」

 25歳のチャンピオンに、そこまでの畏怖心を抱かせた37歳のタイの英雄。長谷川にとって、ウィラポンとは、いったいどんな存在だったのか。

 「初めてウィラポンを見たのは、辰吉丈一郎さんからタイトルを奪った試合('98年)でした。オレはまだ、4回戦デビューするかしないかという頃で、テレビで見て衝撃を受けました。去年、オレが挑戦者として戦ったウィラポンは、辰吉戦と比べればスピードも落ち、年齢的な衰えはあったかも知れません。でも、その分、狡さ、巧さを身につけていました。それに何より、もの凄くハートの強いチャンピオンでした。オレのパンチが効いているはずなのに、顔色ひとつ変えない。しかも、効けば効くほど、逆に前へ出て反撃してくる。絶対に負けへんという気迫を感じました」

──そのウィラポンとの再戦に向けて、何をテーマに練習に取り組んだのでしょうか。

 「妥協しない自分です。妥協しないで、しんどい練習をやり切れば、スタミナは自然とついてくる。そして、自分に負けずに練習をやり切ったという自信が、試合の苦しい場面できっと力になる。実際、試合にむけたスパーリングを打ち上げたとき、自分としては100%の状態を作れたなと思えました」

──今回は地元神戸での防衛戦でした。重圧は、相当なものだったと想像します。

 「精神状態は、その日によって色々でした。死んでもコイツには負けたくないという日もあれば、これだけやったから負けてもええわ、という日もありました。試合当日は、勝ち負けはもう頭になかった。ただ、自分の力を出し切ろうと考えていました」

──1年ぶりに、リングの上で見たウィラポンに何を感じましたか。

 「リングインして相手コーナーを見たときに、いい体に仕上げてきたなと思いました。前回は顔に余裕があったけど、今回は雰囲気が違った。気合が入った顔でした。強そうやなあと思いました。『おお、強そうやなんて思ったらあかんがな』って、心の中で自分にツッコミを入れたのを覚えてます(笑)」

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