SCORE CARDBACK NUMBER

7年間不敗記録を持つ、37歳の“やんちゃ坊主”。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2006/04/06 00:00

 今年初の世界ヘビー級タイトルマッチは、この階級の飛びぬけたスター不在の現状を象徴するような、ヤマ場のない試合だった。3月18日米アトランティックシティで行われたWBCタイトル戦は、王者ハシム・ラクマン(33)がベテランのジェームス・トニー(37)と12回を戦って引き分け防衛。一撃でレノックス・ルイスを眠らせたラクマンの強打は不発に終わった。一方、ミドル級王者から体重を上げてきた挑戦者もナチュラルなヘビー級相手では体負けし、いつもの老獪な攻防技術を十分に発揮できないままだった。

 公式スコアはマジョリティ・ドロー。もし最終回トニーがポイントを挙げていれば、2―1判定で勝ち、4階級制覇を達成していたことになる。ややラクマンに分があったかには見えたが……。

 現在ヘビー級は主要4団体にそれぞれチャンピオンがいるが、このWBCはレノックス・ルイス、ビタリ・クリチコから受け継がれた正統派のタイトル。今回は挑戦者の人気が高く、王座交代濃厚との予想が立てられていた。

 トニーは勝てばリングの上で葉巻をくゆらせ悪役をきどる個性派。その18年近いプロ生活はおそらく何冊もの本が書けるほどのドラマで彩られている。異色の女性マネジャー、ジャッキー・カレンに見出され、マイケル・ナンを倒す番狂わせで世界ミドル級王座についたのが'91年。このカレン、トニーに劣らず個性的で、数年前公開されたメグ・ライアン主演の映画『ファイティング×ガール』は彼女の波乱の半生を下敷きにしたもの。強烈なエゴの持ち主同士とあっては衝突も避けられず、トニーが銃をぶっぱなす事件を起こしてコンビを解消した。

 昨年4月、ジョン・ルイスに一度は判定勝ちしてヘビー級王者になったが、試合後のドーピング検査で引っかかり王座はく奪。試合もノーコンテストに変更され、90日間の出場停止処分を食らった。

 軽い階級からヘビー級に転向する選手にはステロイドを使って増量するケースが珍しくない。トニーもこれで引っ掛かったが、“謹慎”を済ませるや、早速戦線復帰。ラクマン戦の引き分けで王座獲得こそならなかったが、7年間の不敗記録は維持している。元気な37歳、まだまだ引退する気配はない。

ページトップ