Sports Graphic NumberBACK NUMBER

中嶋一貴 15戦分の自信を富士にぶつける。 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

posted2008/10/09 20:52

中嶋一貴 15戦分の自信を富士にぶつける。<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)

 チームメートが最大のライバルと言われるF1の世界で、今シーズン、チーム内のドライバーズポイントでもっとも接近した戦いを演じているのが、ニコ・ロズベルグと中嶋一貴である。開幕戦で日本人フル参戦ドライバーとして初めてデビュー入賞を果たした一貴は、ヨーロッパラウンド初戦のスペインGPでもポイントを獲得。その後もモナコとイギリスで加点し、ヨーロッパラウンド最終戦となったイタリアGP終了時点で一貴の獲得ポイントはチームメートのニコ・ロズベルグと1点差。気がつけば、父・悟氏が築いた日本人フル参戦ドライバーのデビューシーズン最高得点である7点を上回る8点を収めている。

──ずいぶんポイントを稼ぎましたね。

 「やはり、開幕戦でどんな形であれ結果を出すことができたことが大きかったと思います。その後は自分の中で、余計なプレッシャーを感じることなく戦うことができて良かったな、と。ドライバーというのは予選のパフォーマンス、レースでの戦い方、そしてレースで結果を出すという3つのプレッシャーがあるんですが、レースは結果がすべてというところがありますからね。スペインGPは走り慣れたサーキットだったということもあるんでしょうけど、走りはじめからフィーリングが良かった。予選で上回ったことはもちろん、週末を通してチームメートとずっと対等にわたりあえましたしね。雨のモナコでの入賞は、悪コンディションでも集中力を切らさず戦えたという点で自信がついたレース。ミスがなかっただけでなく、レースの内容も悪くなかった。もし、ピットストップでタイヤ交換のロスがなければ、5位になっていたわけですから、モナコで挙げた2点にはそれ以上の価値があったと思います」

──イギリスGPはいかがでしたか。あのレースではピットクルーがタイヤを左右逆に付けるハプニングにも遭遇しましたが……。

 「レースの後で知りました(笑)。でも、自分でも序盤にミスしていますからね。だから、走りという点で自分としては納得してはいないんですけど、そんな状況でも結果を残すことができたことが大きかった。終盤はアロンソらともバトルしたし、結構楽しみました」

──そのイギリスGPでは目の前でお父さんが持っていた「日本人F1ドライバー初年度の最高得点」である7点を抜きました。

 「父はそんなに取っていたんですか!!― そうか、イギリスで4位に入っていたし……」

──もっと前に抜いていたと思っていた?

 「いやいや、あまり気にしていなかったので、そうだったのか、と。まあ、時代も違うし、ポイント制度も異なっていますから、それはそれですね」

 初年度としては悪くないスタートを切った一貴だが、もちろんまだ課題はある。それは予選での一発の速さだ。荒れたレースで抜群の安定感を披露する一方で、予選でロズベルグに勝ったのは2回だけ。予選のプレッシャーに弱いのか。あるいはスピードという点で何か欠けているものがあるのだろうか……。

──前半戦は予選での走りを課題に挙げていましたが、具体的にどんな問題を抱えていたのでしょうか。

 「去年からワンメイクになったこともあって、グリップ力が若干落ちたためだと思うんですが、いまのタイヤは縦方向と横方向のグリップ力の切り替わりに継ぎ目があるんです。だから、ブレーキを残したまま曲がっていくような使い方には向いていないんですね。縦は縦、横は横と、それぞれの方向でうまく使わないとタイムが出ない。例えば、ブレーキを踏んで縦方向のグリップ力でしっかりとクルマのスピードを落としたら、今度はブレーキを完全にオフにして、アクセルを踏んで曲がっていくという感じです」

──昨年も第3ドライバーとして、そのタイヤで金曜日に午前中だけですが、F1を走らせていましたよね?

 「去年は1戦ごとに、午前中に一緒に走るドライバーがニコだったり、ブルツだったりして、比較するのが難しかったんです。それにヨーロッパラウンドではGP2に参戦していたので、F1は走らせていませんでしたから、気がつかなかった。またテストも昨年は1日1台しか走らせることができなくなったので、同じ条件で比較ができなかったんですね。グリップのことは去年のウインターテストのときにエンジニアに言われてようやくわかったんですが、ドライビングというのは頭でわかっていてもそう簡単に体が修正できるものではないので、時間がかかったことは確かです。その点、ウイリアムズにはシミュレーターがあるので、かなり助かっています」

──いまでも、まだ意識しないといけない?

 「そうですね、まだ体が自然に動くというわけではない。頭の中をそれモードに切り替えないと。でも、かなり改善されたと思います。というのも、シケインが多いコースでそういうドライビングが強いられるんですが、開幕戦のメルボルンに比べれば、6月のモントリオール、そして8月のバレンシアとシケインの多いコースで徐々に予選で成績を上げてきましたから、いまはそれが欠点になっていると思っていません」

(続きは Number713号 で)

関連キーワード
ニコ・ロズベルグ
中嶋一貴

ページトップ