SCORE CARDBACK NUMBER

秋場所を面白くした、琴欧州の躍進と失速。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2005/10/13 00:00

 13日目にも決まると思われた優勝は、千秋楽まで、もつれにもつれた。秋場所の大混戦を演出したのは琴欧州の躍進であり、そして終盤の大失速だった。

 新関脇の連勝記録を12に伸ばした琴欧州は、この時点で横綱・朝青龍に星2つの差をつけていた。13日目の直接対決を制し、全勝優勝を達成すれば、大関昇進との声まで囁かれ始めた。勝るのは横綱の意地か、それとも新関脇の勢いか。

 29本もの懸賞がかかった大一番は、短いながら見どころ一杯の激闘となった。左上手を狙って低く左足から踏み込んだ琴欧州。その上手を与えず、逆に左から押し込んだ朝青龍。朝青龍は押し切れぬと見るや素早く叩いたが、前のめりについていった琴欧州は念願の左上手に手をかけ、横綱を後ろ向きにした。しかし、絶体絶命の体勢の朝青龍は驚異の粘りを見せた。瞬時に体をひねって左上手を切ると、バランスを崩して前に飛び込んできた琴欧州の首を左脇に抱え、首ひねりの荒技で土俵に叩きつけた。この瞬間、琴欧州初優勝への流れがピタリと止まった。背後に忍び寄る朝青龍の影に自らを見失った琴欧州は、14日目の稀勢の里戦では全く力を発揮できず、腰高の弱点を露呈し自滅。千秋楽を前に遂に朝青龍に並ばれてしまった。

 本割で共に完勝した2人は、クライマックスの優勝決定戦へと突入した。決戦前の支度部屋、緊張気味の琴欧州に対し、余裕しゃくしゃくの朝青龍。百戦練磨の横綱に対し、初土俵から僅か18場所目の新関脇。相撲経験の差が、勝負にはっきりと表れた。13日目の対戦で善戦したときと、同じ立合いで臨んだ琴欧州。その動きをすべて察知していたかのように、再び左上手を与えることなく、左から攻め立てた朝青龍。今度は土俵際の詰めも厳しく、あっさりと押し出し。熱戦を期待したファンが拍子抜けするほどの格の違いを見せつけ、朝青龍は大逆転で6連覇を達成した。

 先場所に引き続き、あと一歩のところまで迫りながら、手の届かなかった初優勝。琴欧州にとっては、決して忘れることのできない悪夢の終盤3日間であり、勉強という一言で片付けるには、あまりにも惜しい3日間だった。朝青龍の満面の笑みを、果たして琴欧州はどんな気持ちで見つめたのだろうか。

ページトップ