SCORE CARDBACK NUMBER

テニスの本質を無視した、性急な改革に意義アリ。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2006/09/14 00:00

テニスの本質を無視した、性急な改革に意義アリ。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 また改革? 「ホークアイ」というCGを利用した自動ライン判定システムの導入に続き、テニス界は新たに試合中のコーチング導入を検討している。

 WTA(女子テニス協会)は、8月中旬のツアー2大会で、コート上でのコーチングを試験的に導入した。テニスの個人戦は現在、外部からの指導を例外なく禁止している。会話だけでなく身振り手振りのサインもダメ。選手は、試合が始まったら、自身ですべての判断を行うことが義務づけられていた。

 しかし、今度のシステムは、基本的に1セットにつき1回、セット終了後に1回、事前登録したコーチを選手がコート上に呼んで指導を受けることができる。デ杯やフェド杯などの団体戦ではおなじみになったベンチコーチが、個人戦でも実現したわけだ。

 私は新しいものには目がない。しかし、このような改革には違和感がある。導入理由が、ライン判定の正誤やコーチングの効果という本質的な部分より、見た目のアトラクティブ感にあるからだ。「ホークアイ」は、コートの巨大モニターにテニスの試合だけでなくCGも映され、コーチングはコート上での作戦会議が観客の興味を増加させる。

 しかし、「ホークアイ」は2週間で1コート約15万ドル(約1725万円)の経費がかかり、会場の中でも設置可能なコートが限られている。コーチングも、コーチがいない選手もおり、公平性に欠ける。確かに派手にはなるのだが……。試合だけを流すのではなく、色を付けて興味を引かせたいTVと、放映権を売りたいテニス界の2つの思惑が合体し、生まれたのがこの改革だった。

 これを最大限に利用しているのは杉山愛だ。特にコーチングは8月中旬のパイロットペン大会でフル活用した。

 「私にとっては非常にいいシステム。客観的に見ているコーチの意見を聞けることは、プラスになる。何度か、それで盛り返すことができた」

 その効果もあって杉山は3回戦まで進出したが、試合のルール変更には、もう少し慎重であって欲しい。性急な改革は、下手をしたらテニスを本質的に変えてしまうかもしれないのだ。見る者を楽しませるためなら、ファンサービスとして、もっと違う方法があると思うのだが。

■関連コラム► 世界ランク算出方法の変更に、意義あり。 (2006年3月23日)
► 機械では測れないテニスの奥深さ。 (2005年4月14日)

ページトップ