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ブーム再来を予感させる、
シャラポワの急成長。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2006/10/12 00:00

ブーム再来を予感させる、シャラポワの急成長。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

 進化を遂げたマリア・シャラポワが、全米オープンを初めて制し、'04年ウィンブルドン以来、2度目の4大大会優勝を遂げた。待ちに待ったタイトルだった。ウィンブルドン以降、4大大会の準決勝で敗れること5度。迷いがない強打で制した衝撃の初優勝の際は、一気にシャラポワ時代が到来するかと思われたが、それほど甘くはなかった。

 この2年間、下位選手には存在感とパワーで圧倒できたが、相手が上位選手になると、強打に頼る単調さが弱点になった。陣営も弱点を理解しており、プレーの幅を広げるため、多くのショットを練習する彼女が、4大大会前には何度も見られた。その努力が、遂に全米で実った。

 新しいスタイルは、簡単に言うと、メリハリの利いたテニスだ。ストロークのラリーは、チャンスが来るまで強打は封印。相手のコート深くにコントロールし、じっと好機を待つ。シャラポワ自身も「上位選手とプレーする時は我慢が大事。これまでの対戦で、最も学んだことが忍耐」と話している。相手のボールが短くチャンスと見れば、得意とする強打で一気に攻め込む。この攻守の歯車がしっかりとかみ合ったのが今年の全米だった。

 スピードだけが武器だったサーブも、多くのバリエーションが生まれた。持ち味だったフラットサーブに加え、順回転のスピン、斜め回転のキック、横回転のスライスを使い分ける。全米の決勝、シャラポワは第1サーブにほとんどフラットを使わなかった。スピードに頼るだけでなく、球種で相手を惑わせ、エースの数よりミスを誘う頭脳的なサーブを見せた。決勝の相手エナン・アーデンは女子テニス界でも屈指のリターンを持つが、その彼女がシャラポワのサーブに何度もリターンミスを重ねたのは、球種の使い分けでリズムを完全に狂わされたからだ。

 テニスの実力以上に、この2年間は容姿や年間20億円にも上る収入に話題が集中した。「結局は話題先行だったのだ」と限界説も囁かれたが、世間が表の顔だけに注目している間に、シャラポワは着実に自らのプレーを鍛え上げていたのだ。確かに見た目の派手さは消えた。しかし、勝利を意識したプレーは、いま確固たる強さを滲ませている。

 全米で見せたプレーが続けば、シャラポワ旋風の第2幕が開く日も遠くはない。

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