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尾花新監督が「20勝可能」。
眠れる逸材は“恐れぬ男”。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/03/02 06:00

'06年高校生ドラフト1巡目で横浜入団。先発での勝ち星は1年目初登板で挙げた1つのみ

'06年高校生ドラフト1巡目で横浜入団。先発での勝ち星は1年目初登板で挙げた1つのみ

 尾花高夫が横浜の新監督に就任して、ガラリとチームの雰囲気が変わった。球団OBではないため、しがらみもなく思い切った改革ができるのだろう。優勝から遠ざかり、ぬるま湯体質に慣れたチームには、うってつけの人材である。

 リーグ最下位の防御率に終わった投手陣も、明るい兆しが見えてきた。エースの三浦大輔、ダイエー時代の教え子だった寺原隼人、助っ人のランドルフ、さらにはロッテから移籍した清水直行など、戦力は整いつつある。

 でも先発がもうひとり必要だね、と水を向けると尾花はこう反論した。「山口俊がいるじゃない。彼は20勝できる素材だよ。今季は先発を任せるから」とキッパリと言ったのだ。理由を尋ねると「先発はタフでなければならない。山口は心身共に強いし、何より球に力があるからね」と話してくれた。

「ふたつの恐怖」を忘れさせたのは尾花監督の信頼。

 投手は「ふたつの恐怖」をマウンドで感じる、と尾花は常々言っている。ストライクをとれるかという「恐怖」、打たれるのでないかという「恐怖」。山口にはそのふたつの恐怖が無い、という。

「『先発でいく』って言われた時は、えっ僕が、と思いました。でも『お前の球は力がある。相手チームにいた時は嫌なピッチャーだった。思い切っていけばいい』と言われ、吹っ切れました」と先発転向を告げられた嬉しさを語ってくれた。

「中継ぎではいい働きをするが、抑えになると気負ってしまう」と言われた男が、「20勝できる。新しいことをするのではなく、今持っているものをキチンと出せばいい」と新監督から信頼されている。入団してから4年間、否定され続けてきた山口にとって、褒められることは何よりも奮起する材料になるのだろう。

連日100球以上の投げ込みで新監督の期待に応える。

 キャンプで投手がブルペンに入るのは、練習最後の午後3時過ぎ。山口は、周りを気にせずに投げ込めるという理由でいつも最後に入っている。連日100球以上投げ、キャンプ中だけで2000球の投げ込みを考えていると言う。

「身体をバランスよく使って投げると、疲れは感じませんから」とピッチングの秘訣を語ってくれた。名コーチと呼ばれた尾花が名監督と呼ばれるには、山口の活躍が不可欠だろう。

「力士だった父(元幕内・谷嵐)の話題ばかりが先行するのは、本当は嫌だった」と笑う5人目の先発候補が楽しみである。

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