“ポスト阿部”を着々と準備する「育成の巨人」、その強さの源泉。

“ポスト阿部”を着々と準備する
「育成の巨人」、その強さの源泉。

田口元義 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Genki Taguchi

photograph by NIKKAN SPORTS

“ポスト阿部”を着々と準備する「育成の巨人」、その強さの源泉。

 今年の巨人は外野のレギュラー争いが話題となっているが、個人的には今後、注目していきたいポジションがある。

 それは捕手だ。

 選手名鑑を開いてみると、巨人は捕手も豊富に抱えている。レギュラーの阿部慎之助を筆頭に、加藤健、鶴岡一成、實松一成、星孝典、鬼屋敷正人、市川友也と支配下登録選手だけで7人。育成枠も含めると、谷内田敦士、河野元貴とその数は9人。12球団のなかでも中日と並び最も多い人数となる。

 一般的に解釈すればこのポジション、3年間は安泰のはずだ。それは昨年オフ、阿部が3年契約を結んだからに他ならないのだが、その後はどうなる? 3年後のシーズン開幕時だと、阿部は33歳。まだまだ現役を続けられる年齢とはいえ、そこから後進の指導に着手しても遅い。「一人前の捕手に育て上げるまでに 3、4年はかかる」と言われているだけに、今から若手育成に本腰を入れていったほうが、後に好結果をもたらすことにもなる。

 以前までの「補強の巨人」ならまだしも、「育成の巨人」となった今のチームならそれも十分に可能だろう、と思う。

野村克則を二軍コーチに招聘。“ポスト阿部”育成に本腰を。

 その大きな理由が指導者だ。昨年まで東北楽天でコーチを務めていた野村克則を二軍のバッテリーコーチとして呼んだことは、捕手育成にあたり適材適所の人選といっていい。

 野村コーチは、いわずと知れた「野村ID野球」の継承者ではあるが、それ以上に現役時代にレギュラーを勝ち取れなかった悔しさ、苦しさを知っている。だからこそ、二軍の選手と正面から向き合い、根気強く指導することができる。

 キャンプを見たなかで例を挙げれば、シート打撃で投手との呼吸が合わなかった鬼屋敷を呼び、バッテリーとコーチとの間で10分以上も球場内でミーティングをしていた。全体練習後には、彼のほか、星、谷内田、河野といった若手捕手を集め、ゴロ捕球やスローイングなどの自主練習に付きっきりで指導する場面もあった。

 楽天時代、若手の嶋基宏やキャリア10年以上の中堅選手である中谷仁を一軍の主力クラスに育て上げるのに一役買った野村コーチだけに、若手捕手の躍進を期待させるものがある。

 それについて話を聞くと、「まだシーズンが始まっていないし。評価は1年ごとにされるものだから」と冷静にひと言。だから、とコーチは続ける。

「もっと厳しくしないと。観ていてあれじゃダメだと思ったでしょ? 本当は『鬼コーチ』なんだけどね、自分は」

 冗談交じりではあったが、確かな手ごたえを感じているようだった。

<次ページに続く>

► 【次ページ】  レギュラー、控えの分け隔てなくチャンスを与える原監督。

 

筆者プロフィール

田口元義

田口元義

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。共著に「戦力外通告 プロ野球をクビになった男たち」、同「諦めない男たち」などがある。


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