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ファンを戦力に変えたロッテの広報戦略。 

text by

渡辺勘郎

渡辺勘郎Kanrou Watanabe

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posted2005/12/08 00:00

 アジアシリーズも制して六冠を達成したロッテの快進撃を、もはや“勢い”という言葉で済ますものはいまい。そこには着実なチーム力の向上と、そのための取り組みがあった。今年初め、外資系企業の社長から球団の企画広報部長にヘッドハンティングされた荒木重雄氏はバレンタイン監督に、なぜファンサービスをするのか、教えられたという。

 「優勝するチームでも10回試合したら4回負ける。そのときにファンを楽しませる方法を考えないといけない。そうすることによって、またファンが球場に来てくれて、応援してくれる。それが選手の力になり、チームを勝たせる力になるんですよ」

 部長は情報発信の際に“分かり易さ”と“地元”をキーワードにした。たとえば試合日程を知らせるポスター。4月は清水直行、5月は西岡剛と、月ごとに一人の選手の顔のアップ写真を使った。

 「地元の方にアンケートすると『選手の顔と名前が一致しない』という声が聞かれたので、まず顔を売ろうと。選挙ポスターのイメージでスタジアムの最寄り駅などに貼りまくり、球場のスクリーンやメールマガジンでもその選手の顔と名前をどんどん出しました」

 こうした企画広報戦略と好調なチーム成績とが相まって観客動員数が伸び、その声援で選手が奮起し、さらにいいプレーが生まれるという好循環。それを身をもって感じたのが梶原紀章広報担当だった。彼は依頼された取材はできるだけ受けるという方針だった。5月には渡辺俊介に登板間隔の中6日全てに取材が入るようになる。そして久保康友、西岡……と次々にブレイクし、選手側から「ファンは、もはやファンじゃない。戦力だ」という言葉が出るようになっていく。

 最後は日本シリーズMVPの今江敏晃。優勝を決め、午前3時からの取材が済むと祝勝会は終わっていたが「いいですよ。僕、取材のほうが大事だと思ってますから」という言葉が泣かせる。翌日、梶原広報はチーム全体で100件もの取材依頼を受けた。しかし、今江は面倒くさがることなく「いつも行ってるコンビニで『今江さんでしょ』って言われたんですよ」と、ニコニコ話していたという。こんな言葉に今年のロッテの強さの秘密が隠されているのだろう。

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