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険しい道にあえて挑む森田あゆみ。 

text by

吉松忠弘

吉松忠弘Tadahiro Yoshimatsu

PROFILE

posted2008/09/04 00:00

 北京五輪のシングルスで、森田あゆみが日本選手唯一の勝利を挙げた。エースの杉山愛は第10シードのハンチュコバ、男子の錦織圭はウィンブルドン4強のシュットラーというドロー運の悪さもあり初戦で敗退。対戦相手が世界49位のエラコビッチと、最もくみしやすかった森田が初戦を突破する形となった。'05年に国内最年少の15歳1カ月でプロ転向。同年の全日本選手権を、15歳8カ月の史上3番目の若さで制した天才少女は、3年後に五輪初出場を叶え、着々と世界への階段を上っている。

 現在の140位(8月18日付)という世界ランクは、プロデビューの華やかさに比べて、物足りないと感じる向きもあるかもしれない。しかし、'05年当時は世界300位以下。3年で、自己最高の97位(4月28日付)に上昇したことを思えば、順当に成長していると言える。確かに、今年は、五輪前に出場した12大会で、9連敗を含む1勝12敗と結果は出ていない。それが4月に97位まで上がった世界ランクが、現在、50位近く転落した理由だ。しかし、その12大会中、4大大会が2大会、それに続くティア1と呼ばれる規模が4大会、ティア2が3大会と、ツアーでもトップクラスの大会に挑戦し続けての結果だ。森田と丸山淳一コーチには、将来を見据えた目標がある。「今の時期は、世界ランクを考えるよりも、少しでも上位選手との対戦を経験することが大事」。ツアー下部の大会に出場すれば、森田の力なら優勝も普通で、世界ランクを今よりも上げることも可能だ。

 しかし、以前、松岡修造氏が現役の時にしみじみと語った言葉がある。「下のレベルで3年やって、その上に行けないならダメ。そこのプレーのレベルに染まってしまう」。森田や丸山コーチも、その意味をひしひしと感じているのだろう。今なら、多少、世界ランクが落ちても、やり直しがきく。世界トップのテニスを経験し実力がつけば、落ちた世界ランクなど、再び上げることは難しくない。

 錦織圭と同級生のまだ18歳だ。10年後でも28歳。最も脂が乗った時期である。森田と錦織の歩む方法は違っても、目指すところは同じ世界の頂点だ。2人の双肩に日本のテニスの未来はかかる。結果はともあれ、自分のプレーややり方を信じ、それに邁進してほしい。

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