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ボクシングの殿堂にかける見果てぬ夢。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2006/07/04 00:00

 「カナストータ、また行きたいね」

 ファイティング原田さんと顔を合わせるたびに、こう言われる。

 ニューヨーク州の片田舎カナストータ村には「国際ボクシング名誉の殿堂博物館」がある。野球殿堂で有名なクーパースタウンから車で1時間ほどで行ける。フライ、バンタムの2階級を制した名王者は1995年に日本人ボクサーとしてただ1人殿堂入りを果たしているのだ。

 例年6月の第2週には新たに殿堂入りした人々を迎える盛大なセレモニーがある。17年目の今年はマイケル・カーバハル、チキータ・ゴンサレスと'90年代を代表する軽量級ライバルを含む12人が選ばれ、賑やかに殿堂フェアが催された。

 世界タイトルを獲得するのは至難の業だが、「ホール・オブ・フェイマー」と呼ばれるのはさらに稀有で名誉なことである。殿堂は世界中の200人近いボクシング記者、評論家らに投票を委嘱し「モダーン」「オールド・タイマー」「パイオニア」「関係者」「オブザーバー」の5部門ごとに選考される。筆者は'43年以降に引退した選手が対象の「モダーン」部門のみの投票者を務めている。毎年11月に届く投票用紙には予めノミネートされた45人の元王者の名前が羅列され、この中から各投票者が10人ずつを選ぶ。集計したものを検討委員会に諮り、最終的に3人を決める──という仕組みだ。

 ノミネートの中には日本選手の名前もある。白井義男、海老原博幸、大場政夫、そして具志堅用高。日本人初の世界王者から、13度防衛のカンムリワシまで、いずれも一時代を画したヒーローばかり。この中から原田さんに続くのは誰か。今度こそはと期待しつつ投票するが、まだ朗報は届かず、もどかしい思いである。

 ところで、原田さんが協会長を務める日本プロボクシング協会は6年前「日本ボクシング殿堂博物館」設立を目指し準備委員会を発足させたが、その後さほどの進展はない。聖地・後楽園ホール内もしくはその周辺に施設を作る構想は経済的理由から困難にさらされているようだ。

 ならばカナストータが成功したように都会を離れた地ではどうか。「日本ボクシングの父」渡辺勇次郎ゆかりの栃木のどこかに設ける──というのが、「ボクシング殿堂研究家」としての筆者のアイデアである。見果てぬ夢ではあるが……。

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