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タイムリミットが迫る、名王者・徳山の進退。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

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posted2006/06/22 00:00

 徳山昌守(31)の進退問題がまだ決着しない。

 5月25日、大阪・生野区の金沢ジムにメディアを集めて開いた記者会見。重大発表があると聞き、てっきり引退発表と思いきや、「長谷川か亀田と、ビッグマッチ以外はやらない」。これでは2月のナバーロ戦直後から少しも前進していない。

 徳山は昨年川嶋勝重を見事にアウトボックスして世界王座を奪還すると、今年2月には1位挑戦者ホセ・ナバーロに文句のつけようもない判定勝ちで防衛。試合直後のリング上で「これでWBCスーパーフライ級は卒業します」と宣言したのも記憶に新しい。

 徳山本人は引退の覚悟を決めたものの、辞められては元も子もないジム側が必死に説得工作を試み、高額報酬のビッグマッチを実現することを条件に引退を思い留まらせているのが現状のようである。

 徳山自身に全く未練がないとはいえまい。父であり格闘技家としての大先輩でもある四郎さんも「マサはまだまだ衰えていない、戦えます」と太鼓判を押しているように、その気になれる状況が整えばピークを維持することも可能だろう。

 最新のアメリカの老舗専門誌「リング」の評価記事では、スーパーフライ級の「ベスト・ボクサー」とともに「過小評価されたボクサー」にも徳山を選んでいる。以前から筆者も徳山はもっと評価されるべきボクサーとみていたから、わが意を得たりの思いがしたものだ。

 徳山の強さは目に見えにくい。自ら「相手の長所を殺すのが僕の得意技」と公言するように、強敵を並の選手に変えてしまう、駆け引きに長けたボクシングが身上だ。それゆえに、試合は通好み、誰が見ても楽しめるというものでもない。カリスマ指導者・三浦利美が徳山を評してこう絶賛している。「ワンツーを打つのでも、一回一回微妙に角度を変えたりする、これはマネができない。凄いボクサーですよ、彼は」

 ジムが提案した亀田と対戦の実現性は低い。長谷川は対戦を歓迎しているものの、すぐにはできまい。徳山の方のタイムリミットは来年2月。それまでに最上位挑戦者と対戦しないと、チャンピオンの肩書きを奪われかねない。我々はとてつもない名王者が去っていくのをただ見守るしかないのか?

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