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露鵬を“更生”させた、ファンの温かな心情。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2006/10/12 00:00

 名古屋場所の話題をそのまま受け継いだ秋場所。審判部の微妙な裁定で昇進を逃した白鵬、雅山の再挑戦は、序盤戦からまったく見どころなし。それぞれ横綱、大関を狙うには程遠い相撲内容に、正直落胆した。夏場所(共に14勝)で披露した得意の型は影をひそめ、勝ちに固執した安直な相撲の連続。重みを欠いた相撲内容では、周りの後押しムードも起こらない。昇進見送りへの疑問を払拭できずに秋場所を迎えてしまった感のある2人。上の地位に上がればそれなりの結果を残したのかもしれないが、今場所の出来を見る限り、先場所の裁定は妥当だったと言わざるをえない。

 一方、次元は異なるが、協会の裁定をプラスに活かしたのが露鵬である。先場所7日目の千代大海戦後に起こした前代未聞の不祥事。露鵬は押し出された土俵下で千代大海とにらみ合って口論し、風呂場のガラスを壊した挙げ句、カメラマンに「もう撮るな」と手を挙げるという暴挙を犯した。翌日から3日間の出場停止処分。再出場の土俵に上がった露鵬は、激しいブーイングを覚悟していたという。

 しかし、観衆から送られたのは温かい拍手だった。協会の裁定を甘いと感じた人もいただろうが、事件の余韻が残る中で感じたファンの心情。その温もりこそが露鵬を変身させたに違いない。土俵に上がれる喜びを感じながら、勝つことを償いとする新生露鵬の快進撃が、この日から始まった。再出場後4勝1敗で勝ち越し。前頭筆頭で迎えた秋場所でも、その勢いは増すばかりだった。

 初日に大関魁皇を破って白星発進。3日目は岩木山を電車道の押し出し。悪癖の叩きを封印し、恵まれた体力・馬力を最大限に発揮できる、前に出る相撲へ。露鵬は「勝つ相撲」から「いい相撲」へと意識を改革した。結果は自然とついてきた。露鵬を体力で上回る把瑠都、琴欧州を一蹴した相撲には、攻める気迫と2人をしのぐ技が随所に見られた。鋭い立合い、浅めに引く上手廻し、タイミングを計った投げ、的確な体の寄せ、絶妙な膝の使い方等々。あっという間に番付で抜いていった東欧出身の後輩たちに、先輩の意地を見せつけた。先場所問題を起こした千代大海戦も冷静に雪辱し、見事な二桁勝利。露鵬には、今の気持ちをいつまでも持ち続けて欲しい。

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