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甲子園にも負けない、大相撲のライバル対決。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2006/09/14 00:00

 37年ぶりの決勝戦引き分け再試合。駒大苫小牧の田中将大投手と早稲田実業の斎藤佑樹投手の球史に残る投手戦は、斎藤投手の投球が田中投手本来の投球を呼び起こした形の、両者がっぷり四つの熱闘となった。勝ち負けを超越した大きな感動を与えた両者は、今後もお互いを最も認め合う永遠のライバルとして成長し続けることだろう。

 相撲界期待の若手にもこの2人とよく似た関係の2力士がいる。春日野部屋の影山改め栃煌山と境川部屋の澤井である。来る秋場所を新十両として闘う栃煌山と斎藤投手、新十両争いで先を越された幕下の澤井と田中投手がそれぞれ重なる。

 栃煌山と澤井は、共に相撲の名門高校で活躍した。栃煌山は元中学横綱、明徳義塾高校で4冠に輝いた。一方の澤井は埼玉栄高校で高校横綱、国体横綱をはじめ11冠、全日本選手権でも3位入賞、まさに高校相撲界の怪物として君臨した。

 平成17年初場所、2人は高校卒業を待たず、同期生として大相撲の初土俵を踏んだ。高校時代の実績通り、入門後も澤井が栃煌山をリード。序ノ口、序二段、幕下優勝と順調に出世した澤井は、わずか1年で番付を十両直前にまで上げた。

 しかし、今年に入るとこの様相が一変。夏場所には遂に栃煌山が澤井の番付を抜いた。「アイツ(澤井)だけには負けたくない」という強いライバル魂が栃煌山を激しい稽古に駆り立て、一気にその技量を上達させた。187cm、132kgの恵まれた体格を活かし、常に立合いから攻め込む速攻の馬力相撲一筋。真面目でひたむきな性格に加え、澤井を抜いたという自信もあったろう。プロの世界で技術的にも精神的にも一回り大きくなった栃煌山は、幕下上位の壁を難なく突破し、所要10場所で十両に昇進した。

 一方の澤井は精神的脆さのためか、十両目前で足踏み状態。目先の勝ちにこだわった消極的な相撲内容が目立ち、本来の力強く緻密な相撲が殆ど見られない。しかし、田中投手が斎藤投手によって蘇生したように、今こそ澤井は栃煌山の相撲を直視して自分の相撲を取り戻す絶好の機会。澤井が栃煌山の成長を認め、心の底からライバルとして向き合ったとき、眠れる怪物の逆襲が始まるはずだ。

 2人の熾烈な出世争い。高校野球に負けない熱き闘いを期待したい。

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