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土俵狭しと暴れまわる、小兵3力士に注目せよ。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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photograph byJMPA

posted2006/11/09 00:00

土俵狭しと暴れまわる、小兵3力士に注目せよ。<Number Web> photograph by JMPA

 話題満載だった秋場所の期待はことごとく裏切られ、一から出直しといった感のする大相撲界。一年の締めくくりの九州場所では、興行の原点である力士全員の相撲内容に注目する他ない。

 小よく大を制すというのが、昔ながらの相撲の醍醐味だ。かつて鷲羽山や寺尾、舞の海といった小兵力士たちが、土俵上で演じた数々のパフォーマンス。その芸術的ともいえる動きや技の冴えは、ファンの眼を虜にした。しかし力士の大型化が進む中、この醍醐味を期待するのは徐々に困難になりつつある。

 この難題に部屋ぐるみで立ち向かっているのが、安治川部屋である。元横綱旭富士が指導する安美錦、安馬、安壮富士。3人の小兵力士は、努力と工夫を人一倍重ね、先場所で大活躍を見せた。

 前頭3枚目だった安美錦は、腰痛を抱えての苦しい土俵。廻しをきつく締め、コルセット代わりにして何とか相撲を取れる状態だったが、正攻法の動きの中で、相手のバランスを崩す外掛けやいなしを繰り返し、3日連続で大関を破り11勝。3度目の技能賞を獲得した。

 前頭6枚目だった安馬は、関取最軽量。2場所連続負け越した悔しさをバネに、自己新となる初日からの6連勝を果たし、最終盤まで優勝争いに加わって11勝。初の敢闘賞を受賞した。常々「ファンの喜ぶ相撲を取りたい」と口にし、大きな相手にも真っ向勝負を恐れない。無類の稽古熱心、花相撲でも一切手を抜かず、場所後の第65回全日本力士選手権では平幕として25年ぶり3人目の初優勝を飾った。

 十両筆頭だった安壮富士は、安美錦の兄。千秋楽に勝ち越しを決め、'94年の初土俵以来実に12年半かかって悲願の新入幕を果たした。たぐり、いなしに前みつを取っての食らいつき。限りなき勝利への執着心が、兄弟同時幕内誕生の原動力だったことは言うまでもない。

 小兵力士が本場所で必ず味わう後半戦でのスタミナの壁。この壁を打破するため、安治川親方は小兵3人に「大きな人以上に稽古しないと勝てない」と、場所中も30番の稽古を課した。さらに立合いから廻しを狙わずに、小さくても押し込む積極的な取り口を徹底させた。

 来たる九州場所、安治川部屋幕内3人衆には、先場所同様限られた土俵を無限大に使って、大いに暴れまわって欲しい。

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