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理想だけを語らない、
境高校の超守備的戦術。
~高校サッカー界の極北を見た!~ 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byMasako Sueyoshi

posted2010/01/22 06:00

理想だけを語らない、境高校の超守備的戦術。~高校サッカー界の極北を見た!~<Number Web> photograph by Masako Sueyoshi

「守備しかできなくても、ここまでできるというインパクトは残せたのではないかと思います」

 先ごろの全国高校選手権を取材するなかで、境高校(鳥取)・廣川雄一監督のそんな誇らしげな言葉が印象に残っている。

 この大会で見せた、境のサッカーは衝撃的だった。相手FWをいまどき珍しいマンツーマンでマークし、最後尾にはふたりもDFが余る超守備的戦術。特に3回戦の神村学園戦はスゴかった。

 流動的に出入りしてくる2トップ+2MFにマンマークをつけ、その後ろにふたりが余る。さらに、神村の攻撃的SBを高い位置で抑えるため、“ディフェンシブ・ウイング”を両サイドに配し、中央にはボランチを置く。1トップだけを残し、10人で守りを固めた。

 結局、境は後半に2点を失って敗れるのだが、2回戦で10得点を叩き出した強敵を向こうに回し、前半は1本のシュートも打たせなかったのである。

選手も納得ずくの“無粋なサッカー”で3回戦進出。

 それにしても、「パス主体の攻撃サッカー」がもてはやされる昨今、嫌味でも何でもなく、多感な高校生にこれほど無粋なサッカーを浸透させるのは、さぞかし難儀であっただろうと感心した。

「選手も“いいサッカー”を映像で見てるし、それをやりたいのは分かる。だからユーロの試合を見せて、イタリアだってこれだけ守備をしてるんだから、って話してます。ただ、選手たちにはどこまで響いてるのか……」

 苦笑交じりに廣川はそう話すが、きっと選手も納得ずくに違いない。

 その証拠に、人数の上で必然的に手薄になるボランチのところを、ディフェンシブ・ウイングが自分のマークをぼかしつつ巧みにフォローするなど、境の戦術成熟度は高かった。その結果が全国大会2勝を挙げての3回戦進出である。

身の丈に合ったスタイルで結果を残した境高校の潔さ。

 この時期、いつも思うことだが、すべての高校生が世界を目指してサッカーをやっているわけではない。世界や日本のトレンドなんて気にせず、身の丈に合ったサッカーで最大限の結果(勝利)を求める。そうしたやり方があってもいい。

 こんなサッカーでは選手が伸びないと、ケチをつけるのは簡単だ。だが、攻撃サッカーだ、パスサッカーだと言いながら、その実、無闇に蹴るだけの空っぽなチームに比べれば、ずっと潔いと思う。

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