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総得点160が示す
高校サッカーの現在地。 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2009/01/29 04:09

総得点160が示す高校サッカーの現在地。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 決勝戦の3対2というスコアからもうかがえるように、今年度の全国高校サッカー選手権大会は、とにかくよく点が入った。全47試合の総ゴール数は160。前回大会を32点も上回った。両チーム合わせて5点以上入った試合も、前回の5試合から15試合に激増した。

 そんな攻撃偏重の大会が生み出したニューヒーローが、大迫勇也(鹿児島城西)である。6試合連続10ゴールを決め、1大会個人最多得点記録を塗り替えた。エンターテインメントとしては、それなりに見ごたえのある大会だった。

 とはいえ、笑ってばかりもいられない。これが日本の決定力不足解消のきっかけにでもなってくれるなら喜ばしいが、むしろ乱打戦の多さは、大味で低調な大会だったことを表しているように思えてならない。

 確かに、総じてボール扱いはうまくなった。足の裏でなめる。ボールをまたぐ。そんなテクニックは、もはや当たり前だ。ショートパスを主体に、パスサッカーを志向するチームが多かったことも好感が持てた。

 また、積極的にドリブルで仕掛けていく選手の活躍も目についた。得点増をポジティブに受け止める材料がないわけではない。

 しかし、それ以上にディフェンスが緩いのだ。とりわけ中盤でのボールに対する寄せが甘く、球際での争いは厳しさに欠けた。これが得点を急増させた、何よりの原因だろう。

 全6試合で29点を叩き出す一方で、14点も失った鹿児島城西が象徴的だ。大迫勇を中心に、オフェンスの破壊力は抜群だったが、しばしばMFがDFラインに吸収され、ボールの出どころを抑えられないディフェンスは、あまりにも脆弱だった。

 さらに、大会全体の傾向として、一度リズムを失うと、歯止めが利かないチームが多かった。その結果、必ずしも圧倒的な力の差があるわけではないのに、立て続けに失点を重ねてしまうのである。

 「自分たちのサッカーをやりたい」

 よく聞かれるフレーズである。もちろん、それまでの練習によって積み上げられたものは、試合に臨むうえでのベースとしてあるべきだ。

 だが問題は、それができないときにどうするか、だ。一時的に引いて守る。あるいは、ロングボールを使って押し返す。方法は様々あろうが、そうした我慢が利かない。

 この年代においては勝敗がすべてではないとはいえ、18歳と言えば、育成年代の最終段階。流れを見極めて、試合の運び方を考えなければならないし、メンタルコントロールも不可欠なものである。

 優勝した広島皆実の総得点は、全体の流れに逆らうかのように、6試合で9点にすぎない。それでも、弱者が起こした番狂わせの感はない。

 先制され、逆転し、追いつかれ、再び勝ち越すという起伏の激しい試合となった決勝戦。「失点は覚悟していた」という藤井潔・広島皆実監督は、「メンタルも含め、そこで全体のバランスを崩さないように」と心を配った。細心の指揮官の下、今大会随一のプレッシングで中盤を制圧し続ける選手に、慌てたところは見られなかった。

 中盤からの積極的なプレッシングでボールを奪い、テンポよくパスを動かし、サイドからは果敢にドリブル突破を狙っていく。

 大味な試合が多かった今大会を、攻守両面で当たり前のことを当たり前にやれたチームが制したという結果に、少しばかり安堵している。

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