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いよいよ日本が直面する、「ポスト琢磨」という宿題。 

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大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2005/10/13 00:00

 どんなスポーツでも同じ事だろうが、若い才能の育て方に絶対の正解はない。今日本のモータースポーツ界でもそれについて頭を悩ませている人々が大勢いる。

 佐藤琢磨のB・A・R正シート喪失のニュースは、日本のレース界にも大きな波紋をもたらした。この原稿を執筆している時点で彼の去就は定かではないが、もしこのまま佐藤がF1から姿を消すにせよ、何かの裏技が功を奏して現場残留を果たすにせよ、今後は「佐藤の後継者がどこにいるのか。その才能をどう育てるか」に焦点があたることになるだろう。

 近年、注目を集めているのがホンダのドライバー育成プログラムの一環、フォーミュラドリームで活躍する塚越広大である。今年は開幕から5連続ポールトゥウイン、昨年からは通算8連勝中である彼は、特例としてシーズン途中であるにもかかわらず上位の全日本F3選手権参戦の機会を与えられた。

 デビューは8月最終週の富士スピードウェイで開催された第15戦と第16戦。まともな練習走行をする時間もないままのぶっつけ本番ではあったが塚越はそつなくレースをまとめ、第15戦を11位で完走、第16戦では7位に入賞して早くも選手権ポイントを稼ぎ出した。続いて9月第2週にMINEサーキットで開催された第17戦、第18戦でも7位、8位と結果を残し、厳しい評価で定評のある田中弘監督をして「四半世紀にひとりの才能。自分にとっては中嶋悟以来の可能性を感じる」と言わしめた。ちなみに田中監督はF3で佐藤琢磨も担当したことがある。

 ではこの先塚越をどう育てるか。これについては、できるだけ早く海外へという声もあれば、来年はじっくり国内でという声もある。どちらにも一理はあるが、わたしには、拝金主義が横行する現代ヨーロッパのレース界の状況やホンダの用意しうる体制を考えると安易な海外挑戦はリスクが高く思えてならない。国内レースに自信と誇りを持ち方針をしっかりと立てたうえで科学的な育成をすべきではないか。海外の激戦を経験させれば環境が自然に才能を育ててくれるという時代ではない。十分な支援体制となぜ速く走れるのかという自覚のないまま未熟な選手を海外で野放しにしては才能を枯らしてしまうだけだ。

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