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本山vs.井出。チーム内の仁義なき戦いが始まる。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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posted2005/09/15 00:00

 本山哲は今年の開幕前、ブノワ・トレルイエか井出有治のどちらかを押しのけてでもチーム・インパルに割り込むつもりで交渉をしたと言った。念のため、文字にしてもいいかと確かめると、もちろんと答えた。当たり障りのないコメントでお茶を濁すか、おちゃらけた笑い話で場を逃げることの多いこの業界にあって、本山は物事をきっちり語る希有な選手である。当然、それだけの自信と実績があるからこそ取れる態度ではある。

 シリーズ第4戦で全日本選手権フォーミュラ・ニッポンのシリーズポイントランキング首位に立った本山は、第7戦を終え、残り2戦という段階になっても依然として首位の座を守り続けている。夏前にも指摘したが、F1挑戦に対する夢が破れた後、一転、国内中堅チームの立て直しに取りかかり今年は再びチャンピオン目指して突進する本山が、新世代の日本一速い男であることに違いはない。

 だが、実はシーズン終盤になって状況が非常に興味深い方向へと動いてきた。本山は現在王座争いで激しい追撃にあっており、その余裕はわずか4点に縮んだ。しかも迫ってきたのは、前回その勢いを報告したばかりの井出有治なのだ。実は、井出は本山が長年にわたってかわいがってきた弟分である。ところがいつの間にか、弟分は自分の座を脅かす存在になっていた。今や、本山が井出を見る目に弟分を慈しむ余裕は消えた。本山は井出を、明らかに力任せに突き落とさねばならない挑戦者だと見なすようになった。対する井出も、これまでのように本山を尊敬し頼りにする兄貴分としてではなく打倒すべき敵と狙いを付け、本山から王座を奪い取って自分がそこにつくチャンスが来たと考えている。

 もちろんさすがに二人とも表面的には同じチームに属するドライバーとして常識的な態度はとっているものの、サーキットの中にはすでに異様に緊迫した空気が流れ始めている。シーズン残りは2戦、その差4ポイント。格闘するのはこれまで様々な意味で圧倒的な優位にあった本山と、本山を追いかけて急激な成長を遂げた井出である。単にシリーズ終盤戦にもつれ込んだチャンピオン争いでは済まない。本山も井出も、中途半端な取り繕いなどせず骨肉の争いに突入するだろう。外野にとっては面白いことになってきた。

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