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モラレスをねじ伏せたフィリピンの英雄。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph bySumio Yamada

posted2006/02/09 00:00

モラレスをねじ伏せたフィリピンの英雄。<Number Web> photograph by Sumio Yamada

 フィリピンのワンダーボーイ、マニー・パッキアオがまたまた世界のボクシング・ファンを仰天させてくれた。'06年最初のメガファイトとなった宿敵エリク・モラレスとの再戦(1月21日、ラスベガス)で強烈なリベンジを果たしたのだ。それもメキシコのスーパースターを10回にとらえ、左強打で2度のダウンを奪ってのTKO勝ち。これまで一度もKO負けのないタフなメキシコ人に初の惨敗を味わわせ、“パックマン”の株はまたしても急騰した。

 ひとつ間違えば逆に倒されかねない激闘を制した勝負強さと天性の強打にはあきれるほかない。これでマルコ・アントニオ・バレラ、モラレスとメキシコの大物2人を倒したパックマン、今後はバレラと世界3階級制覇を懸けての再戦という大一番が控えている。

 フィリピンのボクサーというと、日本選手の引き立て役を務めるケースが多いが、それはほんの一部であり日本選手が歯が立たないレベルの選手が何人もいることは、通のファンなら承知している。この国の選手の逞しいのは、当たり前に海外に出て戦うこと。これには約800万人が外国で働くという「出稼ぎ大国」ならではの経済事情も絡んでいよう。

 83年前アジアで最初に世界王者となったパンチョ・ビラ以来、この国のトップ選手はアメリカで成功の道を目ざすのが習慣化している。そしてパッキアオもかの地でチャンスを掴み、世界のスーパースターの仲間入りを果たした。今回の試合報酬は200万ドルプラスPPVの売上の一部。日本も含めアジアでこれほどの高額を稼いだボクサーはいない。

 昨年9月、ジムの後輩を応援するため来日した際に話を聞く機会があった。リング上の力ずくで相手をねじ伏せる荒々しさからは想像もつかない、スマートな受け答えが印象的で、改めてこの選手の強さに納得がいったものだ。フィリピンの国民的英雄といえば、筆者のような古いファンはフラッシュ・エロルデの名が忘れられないが、パッキアオは「自分はエロルデを越えた、獲得したタイトルの数でね」と語っていた。今から思えばこれは謙遜だったようである。

 「アジアン・ドリーム」の具現者パッキアオの活躍に、日本のボクサーも刺激を受けてほしいものだ。

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