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秋場所で頭角を現した豪栄道の“有言実行”。 

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服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2007/10/18 00:00

 有言実行。「二桁勝って、三賞を取りたい」。場所前、新入幕の抱負を力強く語った豪栄道(境川部屋)が、宣言通りの大活躍。11勝4敗の好成績を挙げ、見事敢闘賞を受賞した。11日目を終了した時点で、なんと優勝争いの単独トップ。明治42年の優勝制度の制定から新入幕力士の優勝は、大正3年の両国ただ一人。その由緒ある四股名を継いだのが師匠の境川親方ということも何かの縁か。93年ぶりの歴史的偉業へ挑む21歳の若武者が、秋場所の終盤戦の話題を独占した。

 しかし、そこから先が難しかった。最初の“刺客”は、小結の安馬。1横綱2大関を倒し、大関への足固めを狙う安馬の武器は低さとスピード。体格的には互角だったが、相撲の厳しさには雲泥の差があった。豪栄道は立合いの圧力に先手を許し、苦し紛れに前に出るも、回り込まれ後ろにつかれる最悪の体勢。豪快に「送り吊り落とし」で土俵に叩きつけられた。

 次の刺客は、大関の千代大海。優勝争いこそ脱落したものの、意地でも負けられない取組。その意地の前に気後れしたのか、千代大海の突進に文字通り木っ端微塵に吹っ飛ばされた。

 最後はなんと横綱の白鵬。1日前から立場が逆転し、星1つの差で豪栄道が白鵬を追う展開。新入幕力士が横綱に挑戦するのは、土佐ノ海が貴乃花に挑んだ平成7年の名古屋場所以来。上位陣の強さを体感した豪栄道が、少しは自分らしさを発揮出来るか注目された。

 その立合い、豪栄道は確かに白鵬に当たり勝った。上体の起きかけた白鵬がとっさに豪栄道の右腕を抱え、強引な「とったり」。さらに駄目押しされ力尽きたが、立合いの一瞬には豪栄道の無限の可能性が垣間見えた。

 大きな壁にもがき苦しんだ三番。改めて知らされた相撲の深さ、難しさが、今後の豪栄道の「何物にも代えられない財産」になることは言うまでもない。

 小学5年でわんぱく横綱。高校時代には11冠を獲得し、鳴り物入りで境川部屋に入門。幕下上位・十両ではやや足踏みが続き、同期の栃煌山(春日野)や豊響(境川)に入幕で先を越されたが、その屈辱をバネに、満を持しての入幕で大器の片鱗を見せつけた。朝青龍不在の場所の救世主となった豪栄道。その不敵な面構えは、頼もしい限りである。

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