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危機的状況の中、力士たちがすべきこと。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

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posted2007/11/15 00:00

 相撲界が今、窮地に立たされている。診断書を提出して夏巡業の休場を決めながら、母国モンゴルでサッカーに興じた横綱朝青龍。その巡業を軽視した行動に秋・九州の2場所出場停止という処分が下された。心身ともに破綻をきたした横綱が母国で療養中という非常事態の中、さらなる大地震が相撲界を襲った。

 今年6月26日の朝稽古中、時津風部屋に所属していた序ノ口力士・時太山(当時17歳)、本名斉藤俊さんが急性心不全で死亡した。しかし遺体の損傷が激しく、愛知県警は傷害致死事件として捜査に着手した。真相は未だ定かではないが、協会は「師匠として部屋の安全確保を怠り、協会の信用と名誉を著しく傷つけた」と判断し、時津風親方を解雇した。問題山積みの中で部屋継承を任されたのは、なんと現役幕内力士・時津海(34歳)。新時津風親方は終始硬い表情で会見。そこには笑顔はもちろん、現役引退の涙もなかった。「急なことで何が何だか分からない状態ですが、一生懸命がんばっていきたい」。戸惑いとささやかな抱負のみの門出だったが、2日後には自ら稽古まわしを締め、新生時津風部屋を本格始動させた。

 とりあえず九州場所は迎えられるものの、協会に残された課題は深刻である。監督官庁の文部科学省の指導の下、再発防止検討委員会を設置。相撲部屋のあり方や指導の仕方を抜本的に見直すと同時に、親方の知性や人間性を高めるために親方版相撲教習所の設立も提起された。親方たちの意識改革が叫ばれ実行される中、現役力士たちがなすべきことは何か?

 茨城県土浦で行われた秋巡業。超満員の、今や貴重な観衆を前に横綱白鵬が本来の「かわいがり」を披露した。隣町の牛久市出身の稀勢の里を指名し、10番連続で相撲を取った直後にぶつかり稽古を開始した。当たりを受け止め、容赦なく何度も土俵上に転がし、土俵下に落とし、お尻にキックも3発。さらに顔に2度水をかけて闘志をあおって、約6分間にわたり厳しく稽古をつけた。時太山が30分にも及ぶ「かわいがり」の直後に急死し、世間の厳しい目もある中、相撲愛に満ちた正真正銘の荒稽古を見せたのだ。観衆からは惜しみない拍手が送られた。

 全力士が一心不乱に稽古に励み、攻防ある面白い相撲を見せる。九州場所を相撲界総出の出直し場所にして欲しい。

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