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52歳のお祖父ちゃんは
情熱的に輝き続ける。 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2006/12/21 00:00

52歳のお祖父ちゃんは情熱的に輝き続ける。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

 2カ月ほど前に中嶋常幸と会った。レギュラーツアーとシニアツアーに参戦している中嶋は、7月のレギュラーツアー公式戦・UBS日本ゴルフツアー選手権で3位タイとなるなど活躍していた。元気そうな様子に興味を惹かれて、インタビューを申し込んだのである。

 それから1カ月半後の11月、中嶋は三井住友VISA太平洋マスターズで優勝した。52歳と23日目のレギュラーツアー優勝は歴代3番目の高齢で、中嶋は健在ぶりを強烈に示したのである。

 「今、ゴルフがこんなに楽しいものだったのかって思えるんですよ」

 中嶋はインタビューのときに嬉しそうにそう語ってくれた。

 ゴルフの英才教育を父親から受け、青木功、尾崎将司、そして中嶋のAON時代を築いたのは'80年代初頭だった。20代は「勝ちたい、勝ちたい」だけの、30代は「トップになりたい」だけのゴルフだったという。その中嶋が人生の、ゴルフの分水嶺に立たされたのが40代だった。

 「親父が死んで、僕自身も勝てなくなった年代。そのときは、もがいて、もがいて、もがき切った後に、ふと何かが見えた感じだったかな。長く苦しい時期を味わうってことは、生きるための大きな武器になるね」

 苦境を凌いだ先には、新しい道が拓かれていた。

 「40代の最後に、娘が結婚して孫ができたんですけど、その孫が可愛いんですよね。可愛いという言葉は、孫のためにあったのかと思うくらい……。孫が僕の心を癒してくれて、自分のゴルフスタイルを磨いていこう、磨いていけるっていう自信が湧いてきた」

 中嶋は50代になって、ようやくゴルフゲームの真髄に手が届くところまできたのだと思う。ゴルフが楽しい、ゲームを愉しむという気持ちは、勝ちたい、トップになりたいという即物的な欲とは正反対だ。今の中嶋には、最後まで諦めずに自分のゲームをしていけば、自然とスコアに結びつくという心のゆとりがある。

 「中年の星と呼ばれたい」と中嶋はいう。その言葉は、選手としてやり残していることをそのままにはしたくない、という強い思いの表れだ。衰えるどころか、情熱をほとばしらせる52歳の中嶋。今もっとも旬なゴルファーのひとりである。

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