SCORE CARDBACK NUMBER

強い喪失感が漂うヘビー級「谷間の時代」。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2004/05/06 00:00

 この4月は2週間の短期間に4団体計4試合の「世界ヘビー級タイトル戦」が集中して行われる異例の「ヘビー級月間」となった。

 この原稿の締め切り時点で4つ目のWBC王座決定戦の結果は分からないが、すでにファンはヘビー級に強い「喪失感」を抱いているだろう。初戦のWBO戦でウラジミール・クリチコがレイモン・ブリュースターに惨敗を喫し王座に復帰し損なったからだ。ウラジミールとビタリの身長2m超の巨人兄弟が同時に王者となり、しばらく彼らの時代が続く――との夢は呆気なく崩壊した。攻撃面では素晴らしいクリチコ弟だが、守りに回ると意外なほどの脆さを露呈する。

 この翌週往年のボクシング殿堂MSGで行われた2試合はさらにひどかった。WBA王者ジョン・ルイスとフレス・オケンドの「ヘビー級史上初のプエルトリカン対決」は、打ってはクリンチの凡戦の末11回TKOでルイスの勝ち。この内容は期待外れどころか懸念された通り。ファンが主審の早すぎるストップにもさほど騒がなかったのは、退屈な試合にピリオドを打ってくれたからか。続くIBF戦は、クリス・バードが引き分けで王座を守ったが、相手はアンドリュー・ゴロタである。8年前同じ会場でリディック・ボウ相手に反則打を連発した時には暴動が起き、一躍「ダーティファイター」の悪名を轟かせた。当時がポーランド人の全盛で、36歳の今のゴロタに体負けし、善戦を許すバードも頼りない。

 この日リングサイドに座ったL(レノックス)・ルイスやタイソン、ホリフィールドらの顔ぶれに、改めて現在のヘビー級のスター不在を思う。昔からヘビー級王者は英雄であると同時に社会の中で特別の地位を占めてきた。作家バッド・シュルバーグが言うように「多かれ少なかれ時代の精神を反映する」存在なのだ。ジョン・L・サリバン以降、ジャック・デンプシー、ロッキー・マルシアノ、モハメド・アリ、マイク・タイソンと歴代の傑出した王者たちの名を挙げるだけで、彼らの活躍した時代を即座に思い浮かべることができるのである。

 今はそうしたチャンピオンたちのいない「谷間の時代」なのだろうが、ランキングを見渡しても次代を担いそうな候補がいないのが寂しい。当分我々はスターが集うミドル級に目を向けるしかないのである。

ページトップ