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“王者の中の王者”が喰らった敗北。 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

posted2004/06/03 00:00

 一瞬、誤報ではないかと疑った。あり得ないことが起きたのが、5月15日ラスベガスの世界L・ヘビー級タイトル戦。揺るぎない地位を築いていたロイ・ジョーンズが、前王者の“マジックマン”ことアントニオ・ターバーに衝撃的な2回KO負けを喫した。リングのスーパーマンが10カウントを聞く場面など、誰が想像できたろう。

 しかし相手のターバーにしてみれば、番狂わせといわれるのは不本意だろう。昨年11月の初戦は接戦の末に論議を呼ぶ2―0判定でジョーンズの手が挙がった。ターバーは判定を盗まれたと騒ぎ、勝利にケチをつけられたジョーンズも応じて迎えたのが今回の再戦だった。共に35歳だがボクサーとして衰えは見せない。アマ生活が長かったターバーは宿敵の成功に嫉妬し、機会さえあれば自分が最強であることを証明できると豪語していた。

 ジョーンズといえば半年前まで「超安泰王者」の代名詞であり、圧倒的な強さで長くリングを支配してきた。王者の中の王者――パウンド・フォー・パウンドのナンバーワンの称号が相応しい万能ボクサーだった。15年のプロ生活でそれまで唯一の黒星は、モンテル・グリフィンを倒した直後、勢い余って追撃し失格負けを取られたものだが、それでもジョーンズの実力を疑う者はいなかった。実際再戦では初回KOで借りを返しているのだ。

 WOWOWで見た今回の試合も、初回から生意気な挑戦者を力ずくでねじ伏せようという気が見え見えだった。これが裏目に出た。攻撃面にウェイトを置きすぎるあまり防御面がやや手薄となり、間一髪でターバーの左ストレートをよけ損なってしまったのである。慎重なボクサーにしては珍しいが、開始ゴング直前に主審の注意を受ける際ターバーから「今日はどんな言い訳を用意しているんだ?」と挑発されたことも微妙に影響していたか。しかしこれも結果論で、あの一瞬の隙は再び対戦したとしてもターバーが同じようにつけ入ることができたかどうか分からない。

 さて、ターバーの一撃でスーパーマンも人並に倒れることも分かり、今後はどうなるのか。試合直後のコメントでジョーンズは再びヘビー級に上げてマイク・タイソンとも対戦したいと語っている。今回倒されたダメージで天才のコンピューターに狂いが生じていなければそれも面白いが……。

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