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王者の求めた“速さ”が新たな脅威を生む皮肉。 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2006/05/08 00:00

 昨年から今年にかけて、MotoGPクラスの世代交代が一気に進んだ。開幕前に「今年は5年連続チャンピオンV・ロッシvs.若手の対決になる」と予想したが、それは想像を上回るスピードで現実のものになろうとしている。

 開幕戦スペインGPでは昨年の250ccチャンピオン、D・ペドロサが2位になり、第2戦カタールGPでは、やはり昨年250cc総合2位のC・ストーナーが、史上2番目の若さでポールポジションを獲得した。ともに20歳。最高峰クラスではかなり珍しい現象である。

 経験の浅い二人のルーキーが、もっとも難しいと言われるMotoGPマシンを短時間で乗りこなし、2戦ともにトップ6という結果を残した。ペドロサは「2戦を終えただけだが、予想以上にポジティブ」。ストーナーは「PPを獲るなんて何年もかかると思っていた。それがたったの2戦」と、異口同音にこれからの戦いに自信を見せている。

 その要因は、ビッグパワーのコントロールを容易にした制御技術の進化と、タイヤの性能アップにあるようだ。

 事の始まりは、'04年にロッシがホンダからヤマハに移籍したことにある。ロッシは馬力に勝るホンダ、ドゥカティ勢に対抗するため、より速いコーナーリングスピードを求めた。そのリクエストに応える形でタイヤのグリップが向上し、コーナーリングスピードも上がった。そのバイク作りの手法はヤマハのみならず他のメーカーにも波及し、結果的にライダーに求められるライディングの質が変化した。しっかり止めて向きを変え、加速するという以前のような乗り方から、コーナーでスムーズな速さが要求される250cc的なものになったのだ。

 いつの時代も、勝てる選手がライディングの流行を作る。だがロッシのトライによって、250ccからステップアップしたルーキーたちは戸惑うことなくバイクを乗りこなすこととなり、その速さは王者にとって新たな脅威となった。

 最高峰クラスが4ストロークエンジンになって5年。熟成してきたMotoGPクラスのマシンとタイヤは、大きな変化の時代を迎えようとしている。ロッシvs.ルーキーの戦いは、世代交代だけではなく、最高峰クラスにおける新しい時代の走りの幕開きなのかもしれない。

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