SCORE CARDBACK NUMBER

「ノンストップ超特急」、把瑠都凱斗を見逃すな。 

text by

服部祐兒

服部祐兒Yuji Hattori

PROFILE

posted2006/05/25 00:00

 1横綱5大関といういびつな番付となった夏場所。一人横綱は遂に15場所目を迎えた。この不自然さを解消するには、長らく空位の西横綱を埋めるしかない。今年に入り、難攻不落だった朝青龍城に見え始めた小さなほころび。そのほころびを大きな穴にし、いち早く横綱に名乗りをあげるのは誰なのか。5大関が番付上最短距離にいるのは間違いないが、彼らを一気に抜き去るかもしれない、とてつもない可能性を秘めた力士が現れた。ちょっと褒めすぎと言われるかもしれないが、そんな気持ちを抱かせる新入幕力士が今場所、ベールを脱いだ。

 把瑠都凱斗。西前頭11枚目、三保ケ関部屋所属。本名カイド・ホーヴェルソン。昭和59年11月5日生まれの21歳、エストニア共和国ラクヴェレ県出身。身長197cm、体重172kg、A型。平成16年5月場所初土俵、先場所までの生涯戦歴74勝13敗14休。

 両親が幼いころ離婚し、母親に引き取られた把瑠都は16歳から柔道を始め、18歳で100kg超級の国内ジュニア王者に。相撲は柔道の先生に教わった。大学に進学したものの家計が苦しく1年で中退を余儀なくされる。ナイトクラブの用心棒で生計を立てるも、酒・たばこ・ギャンブル漬けの生活。嫌気がさしたころに大相撲入りの話が舞い込んだ。

 昨年九州場所こそ急性虫垂炎で休場したが、先場所は十両全勝優勝の快挙を達成。昭和38年九州場所の北の富士以来、実に43年ぶりの大記録となった。記録のかかった千秋楽も万全の相撲内容。緊張感など無縁の把瑠都は左四つから、まるで赤子をひねるかのように元関脇の隆乃若を右上手で豪快に投げ飛ばした。本格的に相撲を始めて2年。相撲に対する順応力・吸収力の高さには驚嘆させられる。肩越しに上手回しを取る点、立ち腰での立合いなど技術的にまだ甘い面も残るが、それを補って余りある精神力と体力。回しを取れば自信満々、クレーン車の如く吊り上げ気味に強烈なひきつけ。その潜在能力は、間違いなく横綱大関級だ。把瑠都の影響を受けた妹のピュレさんも3年前から相撲を始め、世界選手権で大活躍。まさに相撲が一家の人生を大きく変えつつある。

 皆さん、ノンストップ超特急「把瑠都」を、どうか見逃すことなかれ。

■関連コラム► 「出る出る出島」が、苦しみの現役から引退。 (09/09/02)
► 危機の中で現れた、個性派力士、山本山。 (08/10/23)

ページトップ